著者
今井 直 太原 英生 河村 章人
出版者
三重大学生物資源学部
雑誌
三重大学生物資源学部紀要 (ISSN:09150471)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-12, 1999-12
被引用文献数
2

1996年7月から1997年9月にかけて的矢湾の低次生産環境要因(水温,塩分,透明度,溶存酸素量,クロロフィルa濃度,硝酸態窒素,亜硝酸態窒素,ケイ酸態ケイ素及びリン酸態リン)の観測調査を行った。その結果,塩分,クロロフィルa濃度及び硝酸態窒素は上層でより大きな季節変動を示したが,溶存酸素量,亜硝酸態窒素及びケイ酸態ケイ素は下層でより大きな変動を示した。また,表層において硝酸態窒素とケイ酸態ケイ素は低塩分時に高濃度を示すことから,河川水の影響を強く受けていることがわかった。これに対し,亜硝酸態窒素とリン酸態リンは,溶存酸素量が少なくなる夏季の下層で高濃度を示すことから,底土表層のバクテリアによる再生が寄与していることが示唆された。クロロフィルa濃度は,河口に近く栄養塩濃度が高い湾奥部よりも河川水の影響が比較的弱い水道部において高濃度を示した。また,本研究の調査結果と既知のカキとアコヤガイの生息環境の好適・不適条件を比較すると,的矢湾の湾奥部はカキと真珠の養殖漁場としては不適環境になる可能性のあることが示唆された。

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