著者
鈴木 啓助 小林 大二
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.707-724, 1987-11
被引用文献数
13

北海道北部の森林小流域(流域面積1.28krn2)において融雪流出の観測を行ない,融雪流出水の化学的な性質の検討,および融雪流出の形成機構についての考察を行なった。その結果,次のことが明らかになった. (1) 河川水中のCl<sup>-</sup>濃度は融雪初期に高く,後期には低くなる。HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度は融雪期に融雪の前後より低くなる. (2) 河川水中の陰イオン組成は,融雪開始前はHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>が主要な成分であるが,融雪の開始とともに次第にCrの割合が大きくなり,融雪最盛期にはCrとHCO3<sup>-</sup>の当量がほぼ等しくなる.融雪完了後には融雪開始前の陰イオン組成に戻る. (3) 融雪最盛期の湧水のHCO<sub>3</sub><sup>-</sup>濃度は融雪開始前の河川水の濃度よりわずかに低く,Cl<sup>-</sup>濃度は融雪開始前の河川水の濃度よりわずかに高い.湧水を形成する「ふるい水」もその化学的性質は一定ではなく,わずかに融雪の影響を受けている. (4) 「ふるい水」のCl<sup>-</sup>濃度が徐々に変化するとして,水とCl<sup>-</sup>の質量保存則により2成分の流出成分分離を行なった結果,河川流量に占める「あたらしい水」の割合は,ピーク時でも約40%に過ぎず,日流出高については最大でも22%を占めるに過ぎない. (5) 融雪の進行に伴う積雪域の後退により,「ふるい水」の流出形態に変化がみられる.積雪域が河道近傍まで広がっているときには,「あたらしい水」の地中への浸透による「ふるい水」の押し出し流が顕著であり,積雪域の後退に従い押し出し流の効果が遅くかつ少なくなる.

言及状況

Twitter (2 users, 3 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 森林小流域における融雪流出の形成機構(鈴木 啓助ほか),1987 https://t.co/hxsg24VhQj 北海道北部の森林小流域(流域面積1.28krn2)において融雪流出の観測を行ない,融雪流出水の化学的な性質の検…
1 1 https://t.co/SJ5ONbDOUY
こんな論文どうですか? 森林小流域における融雪流出の形成機構(鈴木 啓助ほか),1987 https://t.co/WSXvuel2kg 北海道北部の森林小流域(流域面積1.28krn2…

収集済み URL リスト