- 著者
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八木 浩司
斉藤 宗勝
- 出版者
- 学術雑誌目次速報データベース由来
- 雑誌
- 季刊地理学 (ISSN:09167889)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.4, pp.121-136, 1997
- 被引用文献数
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ネパールのヒマラヤ前縁帯およびテライ平原において, 天然林 (サラノキ: <i>Shorea robusta</i>) の果実が, カカオ代替油脂 (サルバター) 採取を目的として企業的に利用されている。その利用システムには天然林生産物と地域住民を基層構造とし, 首都カトマンズの企業そして国際市場につながる階層性が存在する。<br>材以外で, サルバターのような国際市場に結びついた天然林生産物利用地域の出現は, <i>S. robusta</i> 林がヒマラヤ前縁帯・ガンジス平原北縁に広大に分布する低価格天然林資源であること, 果実の結実期が乾季でその間農業活動が比較的低調であること, 労働集約型の採取活動が要求されるにも関わらずこの地域の最底辺層に位置する安い労働力が利用できることによって説明される。しかし, サルバター生産地域は, 自然および社会環境の変化に左右される不安定な存在である。さらに <i>S. robusta</i> 林は過度の人為ストレスのため持続可能利用されているとは言いがたい部分も生じている。