著者
村山 良之 八木 浩司
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100225, 2014 (Released:2014-03-31)

1. 2012年土石流災害と本実践の目的 2012年5月5日,アンナプルナ連峰のセティ川沿いで大規模な土石流災害が発生し,72名が死亡または行方不明となった。標高7,000m以上のアンナプルナⅣ峰直下で発生した岩盤崩落は,岩屑なだれ,土石流へと変化して60km流れ下った。発生当日は快晴であり,土石流が迫っていることを下流川の住民は認識できなかった。被災したのは,好天下の河床で採石,採砂の作業者,農耕用家畜を水浴させていた農民,河床に作られた温泉に入浴中の旅行者であった。八木らは聞き取り調査から以下を明らかにした。 高台にいて被害を免れた山麓部の住民は,土石流が来る30分前頃(崩壊発生時刻頃)から,山の方からの振動や爆音,煙状の雲の発生,冷たい風の吹き抜けなど様々な異変に気づいていた。しかしそれらが何わからず,土石流を見てやっと認識するに至った。 地変を目撃した観光遊覧飛行パイロットは,空港管制官に通報し,管制官は地元のFMラジオ局に連絡した。大崩落発生から1時間後に土石流が到達したポカラ市では,そのFMラジオ局が避難勧告を出したことで,犠牲者をかなり食い止めることができたようだ。 地変発生から時間的余裕の少ない大ヒマラヤ山麓部では,住民自らが予兆としての異変に気づき,迅速かつ適切な判断と避難行動を導く知識の普及が必要である。防災教育がこのような災害から命を守るための鍵であることが,明らかになった。 災害に対して脆弱な子どもは,防災教育の対象として重要である。大雨や地震にともなって高頻度で発生する土砂災害だけでなく,静穏時における低頻度だが大規模な災害を見据えると,次世代への継承も視野に入れた,子ども対象の防災教育が必要であり,学校の防災教育支援が重要であると考える。 本実践の目的を,児童が以下のように現象を正しく理解し適切な防災行動ができるようになること,とする。①地すべり,崖崩れ,土石流などの誘因として,豪雨,地震があることを理解し,普段より強い雨や地震の際には急な崖や川筋から離れる。②大雨や地震でなくとも山岳域で崩壊が発生すると土石流となって下流を襲うことを理解し,異様な振動,音などを察知して高台などに避難する。2. 実践の準備と工夫 2012年10月,発表者らは,土石流災害のあったセティ川沿いのカラパニKarapaniにある学校(Shree Annapurna Lower Secondary School,以後アンナプルナ小中学校とする)と,その西隣のモディ川沿いのセラベシ村(ナヤプールの対岸)の学校(Shree Navajyoti Tham Secondary School,以後ナヴァジョティ中学校とする)を訪問し,児童への土石流災害からの回避に関する防災教育を実施したい旨を伝えて,快諾をいただいた。 2013年9月,八木が両校を訪問して日程を確定し,上級学年対象については,NPO法人ネパール治水砂防技術協会のプロジェクトとして,下級学年は発表者らが行うこと等を確認した。 2012年災害を踏まえた上記の目的,対象児童の発達段階,学校の事情を勘案して,土砂災害とそれからどのように逃れるかを示す「紙芝居」と,土石流災害と地すべりの様子を示す「パラパラマンガ」を作成することとした。 紙芝居ののシナリオを発表者らが作成した後,山形大学マンガ研究会に作図を依頼した。その際に,頂部が白い急峻な山,麓の家とバナナ,当地の学校の制服を模した服装等を描いて,子どもたちに身近な話題と感じてもらうようにした。試作段階において複数回の協議を経て,作画を完成させ,また山形大学大学院教育実践研究科の院生諸君(修士1年)から助言を得て改善を重ねた。これをネパールに持ち込み,トリブヴァン大学地質学教室の学生とともにネパール語に訳して,紙芝居の裏に書き込んでもらった。3. 実践の成果と課題 2013年10月21日アンアプルナ小中学校,22日ナヴァジョティ中学校で,紙芝居による授業を,上記学生を授業者として,行った。 土砂災害という子どもにとって難解と思われる現象およびそれへの対処法について,マンガ絵の紙芝居という親しみやすい教材を用いて,さらにネパール人女子学生によるやさしい言葉での問いかけによる授業によって,子ども達は授業に集中できた。このことは,子どもたちの行動や表情,さらに22日の実践で描いてもらったまとめ(感想)の絵等から,明らかである。(まとめの絵については,さらに分析を進める必要がある。)また,両校の校長先生からは,防災教育の必要性を感じながらもどのように伝えるかわからなかったが,本実践が参考になったこと,提供された教材を今後の教育に利用したい旨,おうかがいした。 単発のイベントにとどまらず今後も継続すること,他の学校に広めることが,今後の課題である。
著者
佐藤 剛 木村 誇 廣田 清治 鄒 青穎 八木 浩司
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.129-134, 2019 (Released:2019-06-07)
参考文献数
6
被引用文献数
3 4

A heavy rain event in July 2018 caused many natural disasters such as landslides and floods in western Japan. Many shallow landslides were induced by heavy rain between the night of July 6 and the morning of July 7 in Gogoshima Island, which is located offshore of Matsuyama City, Ehime Prefecture. The main industry of the island is the cultivation of oranges. However, the orange farming infrastructure was devastated by shallow landslides across a large portion of the island. We created a spatial distribution map of the shallow landslides, based on interpretation of the SPOT-7 satellite imagery, to understand their characteristics. Moreover, the mass movement processes were clarified using the results of geomorphological and geological field surveys. The analysis revealed the following : 1) The shallow landslides induced by the heavy rain event were distributed across the island, and the total number of landslides was 207. 2) Relatively elongate, shallow landslides are distributed on the slopes of Mt. Kofuji. The shallow landslide materials changed to debris flows. 3) The field survey revealed that the heads of shallow landslides are located on the geological boundary between granodiorite and andesite. The landslide material was formed of loose, highly weathered granodiorite, called “masa” in Japanese, and thermally metamorphosed granodiorite. 4) The previous debris flow deposits that filled the gullies were eroded by the new debris flows and flash floods.
著者
八木 浩司 丸井 英明 Allahbuksh Kausar Shablis Sherwali
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 : 地すべり = Journal of the Japan Landslide Society : landslides (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.335-340, 2010-11-25
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

パキスタン北部を流れるフンザ川右岸のアッタバードにおいて2010年1月初旬に幅1000m, 比高1000m, 斜面長1500mの規模で地すべりが発生し, 約4000万立方mの移動土塊がフンザ川河谷をせき止めた。移動体は, 青灰色細粒物質をマトリックスとした長軸方向で3-4mから10mに及ぶような岩屑層からなり, この移動体からさらに絞り出された細粒物質が地すべりマウンド上を泥流となって下流側や上流側に流れ下った。本地すべりによる犠牲者は死者19人で, そのすべてはこの泥流に巻き込まれたことによるものである。この地すべりダムは大きな岩屑層からなるため突然決壊の危険性は低いと考えられた。災害4ヶ月前に撮影されたALOS/PRISM画像の実体判読の結果, 谷壁斜面には前兆現象的な変位が認められた。このためヒマラヤなどの高起伏地域での河道閉塞を引き起こす大規模地すべりの事前把握のための衛星画像利用の可能性が示唆された。
著者
八木 浩司 高野 岳彦 中村 靖 村山 良之 檜垣 大助
出版者
THE TOHOKU GEOGRAPHICAL ASSOCIATION
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.161-180, 1991-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

東北地方のスキー場についてその開発過程を整理し, いくつかの視点から立地特性を検討して類型化を行い, スキー場の特徴の包括的な把握を試みた。東北地方における初期 (主に1950年代) のスキー場は温泉集落に付属するものが多数を占めたが, 1960年代には夏型観光地の田沢湖高原や磐梯山などにもスキー場が開かれた。また国体の開催を機にするもの、幹線交通路に接するもの, 都市近郊に開設されたものなど, 立地要因が多様化してきた。1974年以降はリフトの増設は低調になり, 温泉地スキー場の廃棄が目立った。1978年以後, スキー場開発は以前にないほど活発化かつ大規模化し, 人込み客数は急増した。これは, 高速交通体系の整備とレジャー時間の拡大に伴うものといえる。次にスキー場の類型把握のため, (1) 地形的条件, (2) 社会的条件, (3) 規模, (4) 開発経営主体の4点を整理検討した。はじめに, (1) によって以下の3つの自然立地的グループを設定した: i) 山麓型, ii) 山地中腹型, iii) 脊陵主稜型。次いでこれらと (2) を合わせて以下の7つの基本類型を設定した: i)…温泉地型, 集落近隣型, 都市近隣型, ii)…夏季観光地型, 交通依存型, iii)…景勝地亜高山型, 非景勝地脊梁型。これらと (3) (4) との対応から, 各類型の特徴を明確にした。
著者
佐藤 浩 小村 慶太朗 宇根 寛 中埜 貴元 八木 浩司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.250-264, 2021-07-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
37
被引用文献数
1

阿蘇外輪山北西域における的石牧場I断層の上下の断層変位の累積性を,トレンチ調査から明らかにした.本断層周辺では,2016年熊本地震の余震活動は顕著でない.本断層の断層崖は,人工衛星(ALOS-2)データから判明した,本地震に誘発された受動的な上下変位と重複し,その変位は最大で15cmと見積もられている.本地震に伴う変位の明瞭な痕跡はトレンチ壁面では認められなかったが,3,430-2,890 cal BPと2,810 calBP以降に最大50cm変位した複数のイベントが累積的に生じた可能性がある.この断層崖は,固有地震のイベントまたは周辺の断層運動に誘発された受動的なイベントの繰り返しによって形成されたものと考えられる.固有地震だけでなく受動的な上下変位も断層崖の形成に寄与しているとすれば,断層崖が固有地震の繰り返しで形成されたことを前提とする固有地震の再来周期の見積もりにも影響を与えると考えられる.キーワード: 2016(平成28)年熊本地震,トレンチ調査,的石牧場I断層,ALOS-2,受動的な変位+
著者
清水 長正 宮原 育子 八木 浩司 瀬戸 真之 池田 明彦 山川 信之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2016年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100044, 2016 (Released:2016-11-09)

東北地方では福島県と並んで山形県に風穴が多い。天然記念物にも指定された著名な風穴がある。これまでに確認された風穴から山形の風穴マップを作成した。県内の風穴は、自然風穴(地すべり地形・崖錐斜面などで自然状態にある風穴)、人工坑道の風穴、明治・大正期の蚕種貯蔵風穴跡(石垣囲)などに大別され、それらを2.5万分の1地形図索引図に示した。あわせて、各風穴の概要なども展示する。
著者
八木 浩司
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.83-91, 1993
被引用文献数
5 1

真昼山地・和賀岳東側斜面には最大傾斜方向にほぼ直交あるいはやや斜交し, 山稜側に相対する比高5~6mの逆向き小急崖と線状凹地が直線的に発達する。それら小急崖 (小崖地形) の走行は節理系の卓越走行と調和的で, 小崖地形周辺の基盤岩の前倒が認められた。また線状凹地内の堆積物は小崖地形よりも上部の斜面の沈下によってもたらされたような変形を示している。観察結果から小崖地形は, 山腹斜面が基盤岩の前倒により谷方向への反り返り, さらに山頂部が下部斜面に寄りかかるように沈下したことによって発達したものと考えられる。<br>和賀岳東面における基盤岩の前倒による小崖地形形成の引金として斜面に加速度的な振動をもたらす地震が考えられる。さらに小崖地形内で, 本来水平堆積すべき土壌・斜面物質が急斜し, その土壌・斜面物質の中部層準に約1000年前降下の十和田-a火山灰が挾在することから小崖地形の発達にかかわった最後の地変は1896年の陸羽地震の可能性がある。
著者
早田 勉 八木 浩司
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.369-378, 1991-12-25 (Released:2009-08-21)
参考文献数
40
被引用文献数
8 8

Stratigraphic studies of local tephras distributed around the foot of Quaternary volcanoes in Northeastern Honshu, Japan have been carried out since the beginning of the 1969's. Since the discovery of the AT tephra in Fukushima Basin in 1976, a total of seven late Quaternary widespread tephras have been found, interbedded at many localities with local tephras. These are the B-Tm, K-Ah, AT, DKP, Aso-4, Pm-I and Toya tephras, in descending order. They link the stratigraphy of local tephras throughout the late Pleistocene with those in the central and southern parts of Japan. Consequently they are useful in studies of late Quaternary tectonic movements, geomorphic history relating to climatic change, volcanic activities and archaeology in Northeastern Honshu.Ignimbrites of the Lower and Middle Pleistocene have been found in the vicinity of Mt. Hakkoda, along the upper course of the Tama River, Onikobe and Shirakawa areas. Widespread tephras, predating the last interglacial, have not been discovered there yet. It is necessary to find them to support the development of geochronology and other related studies of the Middle Pleistocene in Northeastern Japan.
著者
阿子島 功 山野井 徹 川邊 孝幸 八木 浩司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.110, 2003

<B>1.問題点</B> 山形盆地南部の上山断層は、酢川火山岩屑流台地を上下2面に分ける、地形的には比較的明瞭な活動度B級の断層である。 山形盆地西縁断層群については、科技庁の平成9から11年度交付金による山形県の調査によって活動歴に関する資料が増えた。 地震調査研究推進本部の平成14年5月評価では、予想される最大地震規模7.8、活動間隔約3,000年、最近30年間の地震確率は ほぼ0から7%と 社会的にも影響の大きい評価となった。 その根拠のひとつは、総延長を上山断層を含めて約60kmとしたことである。 しかし、盆地南半西縁の山辺町から山形市村木沢の一連の南北性の断層群と上山断層との連続性には問題がある。 西側隆起という共通性はあるが、上山断層の走向はNE-SW方向で、両者は斜交し、上山断層の走向方向からはむしろ山形盆地東縁の断層に連なる。上山断層の詳細な活動歴・活動様式はわかっていなかった。 地域整備振興公団の協力を得て調査した。 <B> 2.調査手法</B> 上山断層北半部でトレンチ3ケ所、ボーリング2本、酢川火山岩屑流上位面の凹地の堆積層中の広域火山灰検出のためシ゛オスライサーによる採取3本である。<B> 3.調査結果</B><BR> <B> 1) 断層の累積変位量と長期的平均変位速度</B> ボーリングb-1は 断層崖の中腹にあり、上位面頂部より約25m低い。-30mまで粗大な岩屑よりなる火山岩屑流堆積物で断層破砕帯はない。<BR> 下位面のb-2はGL-1から-4mが表層堆積物、-4から-43mまでは一部に木片を含み、やや泥質な部分を含む火山岩屑流堆積物、 -60mまでは岩屑流堆積物である。 -49m付近にせん断面あり。 b-1,2とも第三紀凝灰岩に着岩しなかった。 断層の累積変位量:断層崖両側の酢川火山岩屑流堆積層の頂部の比高(b-1頂+25mとb-2の-4mとの比高)は約46mである。 酢川岩屑流の年代:b-2の-23m,-32mの木片(周辺に腐植層などが挟まれていないので岩屑流に巻き込まれたものと解釈)の14C年代は 後述T-1の年代よりも新しくなり上下逆転した。 上位面の凹地堆積層6mのうち2枚の火山灰をそれぞれNm-Kn,Ad-N1に対比し(八木が別報とする)、2層の火山灰年代を外挿すると、火山岩屑流台地面が形成された年代は 約75,000年前となる。 よって、長期的平均変位速度は約0.6m/1000年(1.8m/3000年)となる。<B>2)最新の断層運動</B> トレンチT-3(探さ3m、延長6m)では、黒ボク土を含む礫層と締まった砂礫質粘土層が 逆断層状に接している。イベントは2回以上、変形を受けた礫層の年代は3,430+_50(yrBP)、覆土の年代は270+_40(456から5 Cal yrBP)である。 上下方向の単位変位量は1.5m程度。<B>3)未固結堆積層の塑性変形</B> T-1、T-2では、断層破砕帯は認められないが、顕著な地層の変形がみられる。 T-1(8m深、20m長)に酢川火山岩屑流堆積層の2次堆積層がみられ、地表面傾斜が約10°、 トレンチ上部の地層の傾斜が約20°である。高角度の明瞭な断層破砕帯はないが、3種類の変形構造が認められる; 1)層理面の変形で波高1.5m程度の波状および炎状の断面形を示す。 2)層内の微小なせん断構造。 3)幅数cmで、延長が数m以上つづく低角度・南傾斜のせん断面である。 T-2(6m、30m長)では、岩屑流堆積層の2次堆積層のなかに著しい変形構造が認められる。 最大波高2mで、地層のひきずり変形構造、 褶曲構造、礫の配列異常など。変形のひきずり方向は南側へ押し出すような方向である。変形している地層の年代測定を行った結果、変形の時期はT-1では46,300±630(yrBP)以降、T-2では27,870±190(yrBP)以降であった。断層活動の強振動によって未固結の堆積層が塑性変形した可能性がある。<BR>図1 上山断層北部の調査地点 CTO-76-19に記入
著者
八木 浩司 丸井 英明 Allahbuksh Kausar Shablis Sherwali
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.335-340, 2010-11-25 (Released:2011-09-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1

パキスタン北部を流れるフンザ川右岸のアッタバードにおいて2010年1月初旬に幅1000m, 比高1000m, 斜面長1500mの規模で地すべりが発生し, 約4000万立方mの移動土塊がフンザ川河谷をせき止めた。移動体は, 青灰色細粒物質をマトリックスとした長軸方向で3-4mから10mに及ぶような岩屑層からなり, この移動体からさらに絞り出された細粒物質が地すべりマウンド上を泥流となって下流側や上流側に流れ下った。本地すべりによる犠牲者は死者19人で, そのすべてはこの泥流に巻き込まれたことによるものである。この地すべりダムは大きな岩屑層からなるため突然決壊の危険性は低いと考えられた。災害4ヶ月前に撮影されたALOS/PRISM画像の実体判読の結果, 谷壁斜面には前兆現象的な変位が認められた。このためヒマラヤなどの高起伏地域での河道閉塞を引き起こす大規模地すべりの事前把握のための衛星画像利用の可能性が示唆された。
著者
佐藤 浩 八木 浩司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.207, 2011

ネパール東部では1934年にM8.2の地震が発生したが,地震空白域に当たる西部では,今後の地震による斜面崩壊の多発と住民への被害が懸念されている.そこで,先行研究の活断層図を用いてネパール西部における地震時の斜面崩壊の脆弱性をマッピングした。その結果を報告する。