- 著者
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清水 龍瑩
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 三田商学研究 (ISSN:0544571X)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.2, pp.1-20, 1995-06-25
情報化,グローバル化,不況の長期化が進むなかで,中間管理者の余剰感は増大してきた。しかし情報処理,国際業務処理などの中間管理者の能力は,益々重視されるようになり,またその能力発揮プロセスよりも,結果である業績が重視されるようになった。人事評価基準は,外界の状態と企業の状態との関数であって,万古不易のものはない。急成長企業では,自ら企業家精神を発揮し,新しい提案をし,実行する中間管理者が高く評価され,停滞している企業は,沈滞している部下に意識革命をおこさせるネアカな人間が,高く評価される。中間管理者の評価基準としての部下の育成は,日本の企業にのみ通用する基準であって,外国企業では通用しない。評価の公平性,公正性は,評価者,被評価者および,周囲の者によって納得されるとき,はじめて認められる。しかし,人間による人間の評価には,必ず個人的な偏りがあるから,複数上司の評価,敗者復活の制度が必要である。時系列的にみると,従来の成長期には,上司,その上の上司と,横からの人事評価が一般的なシステムであったが,現在は,人事部の評価が少くなってきた。何らかの理由で,会社の主流からはずれた専門能力のある中間管理者を,グループ大企業間を移動させ,その能力を最大限発揮させたり,あるいは,その専門能力の開発教育と同時に,ボラソティア活動を奨励し,人生観を変え,「人生再設計」を実行できるようにすることが,これからの中間管理者の新しい方向である。