著者
鈴木 諒一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.27-32, 1996-06-25

1995年春の神戸の大地震と,円高不景気以来,海外に工場を移す会社が増えた。従って生産が増えても,国内の失業者の数は増えた。又,生鮮食料品の輸入が増えて物価は下ったが,農家所得は減った。GDPが世界一を誇った日本経済も,今や順位は下降し,世界第4位となり,産業別,地域別の賃金格差は増大して行くであろう。一方に於て,世界経済も不況に悩まされている。アメリカの財政赤字削減政策は,なかなか成功しないし,ドイツは,東西合併の余波が未だ続いて,低成長が続くであろう。これが,わが国の国際収支にまで影響してくるであろう。これにより,わが国GDPの予測は出来るが,その裏付けとなる地価の絶対額と,その昭和62-平成6年の変動率を,都道府県別に観察していこう。最も水準が低いのは,そして上昇率も低いのは,山陰地方であり,反対に上昇率が高いのは,大都市周辺の県である。これは人口疎開の面から云って,重要な参考資料となるであろう。もっとも,産業構造の変化との組合せ,との関係を追求していかなければならないわけであるが,以上,低成長下のわが国経済の問題点を指摘したまでである。

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