著者
高橋 美樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.123-140, 1999-02-25

本稿では,創業支援策の理論的根拠を提示し,創業支援策と中小企業政策との関連を明らかにする。近年の「進化論的経済学」に従えば,創業支援策の理論的根拠は,基本的に,イノベーション創出における中小・ベンチャー企業の優位性に求めることができる。一方,中小企業政策の理論的根拠は,活力ある独立した中小企業を育成することが「大企業・独占への対抗勢力」となる点に求めることができる。以上のような議論を踏まえると,結局,中小企業の存在意義は,単なる「反独占勢力」ではなく,「イノベーション創出を担う反独占勢力」という点にある。そして中小企業政策や創業支援策の目的は,こうした中小企業を育成することにある。その場合,いたずらに中小企業を「保護」するのではなく,積極的な競争促進政策と創業支援策の一体的活用を通じて中小企業を「育成」する-これが,創業支援策が活発化する現状での,今日的な「反独占政策としての中小企業政策」なのである。

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