- 著者
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小野 晃典
- 出版者
- 慶應義塾大学
- 雑誌
- 三田商学研究 (ISSN:0544571X)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.1, pp.13-40, 2001-04-25
社会学者E.M.Rogersを代表とする普及研究はしばしば,革新を徐々に普及させる駆動力としてのコミュニケーションの役割として,「情報の送信と受信」の局面と「革新(新製品)の社会的意味の形成と反応」の局面とを混同している。先の拙稿は,前者の「情報の送信と受信」の観点から,Rogersによる5種類の採用者プロファイルを定式化し,各採用者の新製品採用時期と社会システム内の新製品普及パターンを導出しうる理論モデルを形成した。それとは対照的に,本稿は,後者の「革新(新製品)の社会的意味の形成と反応」の観点から,同様の試みをなす。議論は普及論の枠を超え,経済学者Leibensteinのバンドワゴン/スノッブ効果,心理学者Fishbein&Ajzenの行動意図モデル,経済学者Veblenの顕示的消費論,社会学者Simmelのトリクル・ダウン論に及び,それらは一括して多属性効用型ブランド選択モデルの形態で整序される。最後には普及研究に立ち戻り,それまでの議論を参照しつつRogersの採用者プロファイルを「革新(新製品)の社会的意味の形成と反応」の視点から定式化し,先の拙稿と対を成す理論モデルを形成する。