著者
仲川 勇二 檀 寛成 井垣 伸子 小野 晃典 伊佐田 百合子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

経営科学の分野で世界最高峰の学術雑誌であるManagement Science誌(2014年Vol. 3)に仲川の離散最適化に関する新解法の論文が掲載された。最適化の分野での掲載は日本人として40年ぶりである。また、非凸問題が離散最適化解法で容易に解けることを利用して、金融工学の難問やゲノム科学の「次元の呪い」や「失われた遺伝率」と呼ばれよく知られた難問の解決に向けて、すでに顕著な成果が得られている。ゲノム科学の難問の克服は、高血圧、がん、統合失調症等の複雑な病気の治療を大きく前進させる可能性がある。
著者
石井 隆太 白石 秀壽 小野 晃典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.83-93, 2020-09-29 (Released:2020-09-29)
参考文献数
10

アニメ等のコンテンツに登場するキャラクターを象ったフィギュアは,世界中のファンたちを魅了している。そんなフィギュアを生産するメーカーとして,国内有数のシェアを誇り,業界をリードしているのが,株式会社グッドスマイルカンパニーである。フィギュアの生産には,熟練工による手作業が必要不可欠であるため,フィギュアメーカーは,その生産工程の多くを,人件費の安い海外の委託工場に外注している。しかしながら,グッドスマイルカンパニーは,2014年,鳥取県倉吉市に楽月工場を建設し,全メーカーに先駆けて,一部の製品を,国内自社工場で生産することにした。このように,生産活動の内製と外注を同時に行う戦略は,デュアル・ソーシング戦略と呼ばれる。本論は,この戦略を採用することによって,同社が,フィギュアの品質向上・費用低下を実現するだけではなく,生産技術の立ち遅れを取り戻した上で,生産効率化の余地を探究し,取引条件に関する詳細な交渉を行うことにも成功しているということを示す。
著者
北澤 涼平 小野 晃典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.29-41, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
23

本研究は,ファン(コンテンツの自己関連性が低い消費者),マニア(コンテンツの自己関連性が高く,社交性も高い消費者),オタク(コンテンツの自己関連性が高いが,社交性は低い消費者)の3種のコンテンツ消費者を検討する。4つの実験の結果,ファンは,個人的所有感も集団的所有感も低く,レンタル=サブスク型リキッド消費を選択し,マニアは,個人的所有感も集団的所有感も高く,経験価値型リキッド消費とソリッド消費を選択し,オタクは,個人的所有感は高いが集団的所有感は低く,ソリッド消費を選択するという知見を提供する。そうすることによって,本研究は,コンテンツビジネス研究,リキッド消費研究,経験消費研究,心理的所有感研究の発展に貢献する。
著者
小野 晃典 小野 雅琴
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.90-100, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
12

日本全国9,000以上の駅を美少女キャラたちと周遊する位置情報連動型ゲーム「駅メモ! ―ステーションメモリーズ!―」は,最近,乗客減に悩む鉄道会社や自治体等のO2Oデスティネーション・マーケティング施策に加担するべく,当地を出身地とする美少女キャラを誕生させると共に,その美少女キャラを主人公とした短期デジタルスタンプラリーを開催することによって,このゲームに熱狂し多大な時間的・金銭的コストを喜んで旅に振り向けるゲームオタク,鉄道オタク,および美少女キャラオタクたちを,デジタルスタンプラリーの開催地に誘客し,周遊させることに成功している。本論は,「駅メモ!」による数多くの成功例のうちの数例を振り返った上で,そのO2Oデスティネーション・マーケティング・モデルとしてのポテンシャルについて議論する。
著者
小野 晃典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.6-19, 2019-03-29 (Released:2019-03-29)
参考文献数
22
被引用文献数
2

企業は,自社製品を物理的に擬人化することによって,消費者とのリレーションシップを強化することを目論むことがある。このとき,「製品の顔」に相当する部分は,擬人化製品にとって,パーソナリティ評価を左右する最も重要な部分である。このことに関する既存研究は,怒った目(vs. 笑った目)と笑った口(vs. 怒った口)の組合せが,最も選好される自動車の「顔」のデザインであると主張した。それに対して本研究は,4種類の目(怒った目,笑った目,四角い目,丸い目)と3種類の口(笑った口,怒った口,真っ直ぐの口)のデザイン,および,製品と自己(現実自己/理想自己)のイメージ適合を考慮に入れて分析を行う。その結果,12種類の擬人化製品は各々,固有の製品イメージと結びついており,それらと理想自己イメージとの適合度の高い消費者に選好されるということが見いだされた。このことは,選好度の高い唯一の「製品の顔」は存在せず,それゆえ,多様なニーズに合わせた「顔」にカスタマイズできる生産システムの構築を考慮に入れるべきことを含意している。
著者
小野 晃典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.3-5, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
6

This special issue contains five articles that analyze various marketing phenomena using qualitative comparative analysis (QCA). QCA is a relatively new method for testing complicated hypotheses in the social sciences. Several overseas journals have published special issues on QCA, but no issues with a focus on QCA have been organized by marketing journals in Japan. As the first of its sort on QCA in Japan, this special issue provides both high quality QCA articles and datasets that support the hypotheses in each of these articles.
著者
石井 隆太 小野 晃典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.109-119, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
14

漆器は,陶磁器やガラス食器などと並ぶ,日本における伝統的な食器類の一種であるものの,その需要の多くは外食業やサービス業向けの業務用に偏り,消費者用漆器は高価な工芸品に留まっているという,他の種類の食器類にはないイビツな商品構成によって特徴づけられてきた。この2種類の漆器のうちの1つである業務用漆器の一大産地,福井県鯖江市の河和田地区において,漆器に漆を塗る職人の家庭内手工業者として創業二百年の老舗である漆琳堂は,近年,普段使いの消費者用漆器を新たにデザインし,新たな販路を開拓した上で,それをいくつかの新規ブランドの下で販売することによって,消費者用漆器の巨大な新市場を創造することに成功している。本論は,その成功要因は,デザイン会社との提携,直販チャネルの構築,そして何より,漆琳堂社長で伝統工芸士の内田氏の企業家精神に存するということを論じる。
著者
小野 晃典 菊盛 真衣
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.22-37, 2018 (Released:2020-01-24)
参考文献数
26

イノベーション普及論の分野における有名な古典理論において,早期に採用した消費者はいまだ採用していない消費者に対して正の口コミを発信するというテーゼがあるが,これに対して,近年,消費者はしばしば高い独自性欲求を有しており,そのような場合には,正の口コミ発信は控えられ,その結果,普及は生じない,という主張が展開されるようになった。しかしながら,この主張は,独自性欲求を一次元的にとらえた上で展開されている点に問題を抱えている。本論は,独自性欲求を三次元に分類した上で,正の口コミを抑制する効果を有するのは特定の種類の独自性欲求のみであり,独自性欲求の高い消費者が必ずしも正の口コミ発信を控えるとは限らないと主張する。
著者
白石 秀壽 小野 晃典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.68-80, 2019-09-27 (Released:2019-09-27)
参考文献数
5

世界有数の鶏卵生産消費国である日本において,大量生産がますます進む一方で,少量の高級ブランド卵を生産する様式を採用する養鶏業者も登場している。そんななか,高級ブランド卵を大量に生産して販売する鳥取県八頭町の養鶏業者がある。それが「大江ノ郷自然牧場」(農業生産法人・有限会社ひよこカンパニー)である。同牧場は,高級ブランド卵「天美卵」を成功させたに留まらず,その卵を使用した加工食品を開発して併売する形で第二次産業に参入し,さらには,農業や食を体験させることのできる施設を建設することによって,第三次産業にも参入し,それらについても,首都圏その他の大市場から離れた過疎地域であるにもかかわらず成功を収めている。本論は,事業成功のカギを握る同牧場のビジネスモデルを解析する。
著者
小野 晃典
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.13-40, 2001-04-25

社会学者E.M.Rogersを代表とする普及研究はしばしば,革新を徐々に普及させる駆動力としてのコミュニケーションの役割として,「情報の送信と受信」の局面と「革新(新製品)の社会的意味の形成と反応」の局面とを混同している。先の拙稿は,前者の「情報の送信と受信」の観点から,Rogersによる5種類の採用者プロファイルを定式化し,各採用者の新製品採用時期と社会システム内の新製品普及パターンを導出しうる理論モデルを形成した。それとは対照的に,本稿は,後者の「革新(新製品)の社会的意味の形成と反応」の観点から,同様の試みをなす。議論は普及論の枠を超え,経済学者Leibensteinのバンドワゴン/スノッブ効果,心理学者Fishbein&Ajzenの行動意図モデル,経済学者Veblenの顕示的消費論,社会学者Simmelのトリクル・ダウン論に及び,それらは一括して多属性効用型ブランド選択モデルの形態で整序される。最後には普及研究に立ち戻り,それまでの議論を参照しつつRogersの採用者プロファイルを「革新(新製品)の社会的意味の形成と反応」の視点から定式化し,先の拙稿と対を成す理論モデルを形成する。
著者
小野 晃典
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.11-33, 2010-10

論文本論は, ホビー製品の2つの特性を定義した上で, 消費者関与研究の知見を活かしてホビー消費者の個人特性を論じると共に, 新製品普及研究の知見を活かしてホビー消費者の社会的相互作用を論じる。集中的消費やこだわり, あるいは, 創作活動といった特性は, ホビー消費者に特有とは言えない高関与消費者の特性である一方, ホビー消費者間の関係, および, ホビー消費者と一般市民の間に特有の関係のモデル化が重要であるということが見いだされる。