- 著者
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坂田 一浩
- 出版者
- 熊本大学
- 雑誌
- 国語国文学研究 (ISSN:03898601)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, pp.80-93, 2003-03-25
現代語において「AもBは」という形式をとる、『彼も数学は苦手だ。』『そっくりな二人も、歯の色は違う。』『あの鬼社長もカミさんには滅法弱い。』『君もやる時はやるんだね。』のような諸例には、共通した或る特徴的な意味構造が見出される。そしてそれは、ここに現れている助詞「も」「は」がそれぞれ、「極端例の提示」および「対比・限定」という含みを帯びることによってはじめて明示され得るものと考えられる。本稿ではこのような現象と、その要因について、古典語、とりわけこの形式を意図的に修辞技法として用いたと見られる古典和歌に遡って検証することをその目的とする。