- 著者
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久米 元
山口 敦子
青木 一郎
- 出版者
- 長崎大学
- 雑誌
- 長崎大學水産學部研究報告 (ISSN:05471427)
- 巻号頁・発行日
- vol.84, pp.39-46, 2003-03
- 被引用文献数
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東京湾、大阪湾、新潟県沿岸域、有明海の4海域で底曳網によって採集した1454個体の標本をもとに、テンジクダイの食性について調査を行った。有明海個体群については、サンプル数が十分ではなかったため、そのデータは胃内容物組成の解析にのみ用いた。空胃率は大阪湾個体群の24.9%から新潟県沿岸域個体群の43.4%、胃内容物重量指数は新潟県沿岸域個体群の0.66から東京湾個体群の1.6と、ともに個体群間で大きな違いがみとめられた。平均重量百分率、出現頻度、ランキングインデックスの3つの指標を用いた解析により、主要な餌生物は全ての個体群で甲殻類であり、なかでも東京湾、大阪湾、新潟県沿岸域の3個体群では小型長尾類が、有明海個体群ではアミ類が最も重要な餌生物となっていることが判明した。東京湾個体群では、小型長尾類のなかでもエビジャコに対する割合が極めて高かった。甲殻類以外では、有明海を除く全ての個体群で魚類がみとめられた。また、産卵期に多くの雄の胃内に未発達で消化の進んだ同種の卵塊がみられた。各個体群で、全長の大きいものほど高い割合で卵食を行っていることが明らかとなった。本種特有の口内保育様式から判断して、この結果は、雄が大型個体ほど高い頻度で口内保育を行っていることを間接的に示していると推察される。