- 著者
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大場 伸哉
鈴木 祐介
藤本 文弘
- 出版者
- 岐阜大学
- 雑誌
- 岐阜大学農学部研究報告 (ISSN:00724513)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, pp.7-13, 1997-12-26
ソバ属(Fagopyrum spp.)栽培種は収穫時に脱粒しやすい。そこで本研究では,小枝強度を指標にしてソバ属2種の脱粒性を調査した。供試した材料は,日本産,ソ連産およびネパール産の普通ソバ(F. esculentum Moench.)3品種2系統とソ連ならびにネパール産のダッタンソバ(F. tataricum Gaerutner)2系統である。開花・結実後3日毎に小枝の抗張強度と抗曲強度を測定し,登熟に伴う小枝強度の変化を調べた。また,登熟程度の目安とするために,痩果の生鮮重を測定した。結実直後の抗張強度ならびに抗曲強度は,全品種・系統とも10g程度と小さく,登熟するに従い次第に増加した。しかし,登熟が終わると,日本産やソ道産の普通ソバでは抗曲強度が顕著に低下した。登熟後の普通ソバとダッタンソバの小枝強度を比較すると,ダッタンソバの強度は普通ソバの半分程度に過ぎなかった。一方,抗曲強度の最高強度を普通ソバの品種・系続開で比較すると,最も強いネパール産ソバと最も弱いソ連産ソバとの差は11gで,その差は比較的小さかった。また,ダッタンソバの場合は,系統間に有意な差はなかった。抗張強度の測定時に痩果が離脱した部位を調べたところ,痩果の基部付近から小枝の中央部にかけて離脱しやすいことがわかった。これは,イネ科植物で見られるような特定部位での脱粒とは異なっている。