著者
植村 和正 井口 昭久
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.116-120, 1999-09-13
被引用文献数
1

「終末期医療」における患者の「自己決定」に関して、我が国における過去の「安楽死」事件の判例を検証.考察した。これまで7件の「安楽死」事件はいずれも有罪となっている。判決の法的根拠となった昭和37年の名古屋高裁の「六要件」の理論的背景は「人道(生命尊重)主義」である。平成7年の横浜地裁判決における「四要件」の法的根拠として「自己決定権」の理論が挙げられたが、「緊急避難の法理」も適用しており、従来の「生命尊重」優位の思想が引き継がれていることにも留意しなければならない。現時点では「安楽死」を法律が許容する余地は極めて小さい。いわゆる「尊厳死」に関しては、横浜地裁判決において「自己決定権」の理論と「医師の治療義務の限界」が法的根拠として挙げられた。微妙な判断が医師に委ねられた「法的不安定さ」を「科学的客観性」によって補っていると解釈できる。今後の検討は、人の生死における「尊厳」とは何か、「自己決定権」の遡及範囲、患者の「最良の利益」を保障するための方策、に向かうべきものと思われる。

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