- 著者
-
榎 裕美
杉山 みち子
井澤 幸子
廣瀬 貴久
長谷川 潤
井口 昭久
葛谷 雅文
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.6, pp.547-553, 2014-11-25 (Released:2015-02-26)
- 参考文献数
- 24
- 被引用文献数
-
6
目的:本研究の目的は,神奈川県および愛知県において構築したコホート(the KANAGAWA-AICHI Disabled Elderly Cohort(KAIDEC))の横断研究として,在宅療養高齢者の栄養障害の要因を明らかにすることである.対象および方法:対象は,KAIDEC Studyに登録された居宅介護支援事業所の居宅サービス利用者1,142名(男性460名 女性682名 年齢81.2±8.7歳)である.登録時の調査は,要介護度等の基本情報,低栄養評価(Mini Nutritional Assessment short form:MNA®-SF)および摂食・嚥下障害(Dysphagia Severity Scale:DSS)の状況等の調査を実施した.慢性疾患については,疾患別に分類し,さらに併存症の指標であるCharlson Comorbidity Indexを用いて点数化を行った.MNA®-SFの3群間の比較は,χ二乗検定および一元配置分散分析を行い,栄養障害の要因分析は,MNA®-SFを二分変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った.結果:MNA®-SFによる低栄養のスクリーニング結果は,栄養状態が「良好」と評価されたのは全体の27.8%,「低栄養のリスクあり」は55.4%,「低栄養」は16.7%であった.二項ロジスティック回帰分析(「低栄養」とそれ以外の二項)の多変量解析の結果,低栄養と関連する有意な因子は,ADLが低い,過去3カ月以内の入院歴がある,摂食・嚥下機能の低下,認知機能低下の因子であった.また,訪問診療および訪問介護の利用との関連も認められた.結論:居宅療養高齢者の低栄養は,ADL,入院歴,認知機能,摂食・嚥下機能との関連が強く認められた.