著者
井口 昭久
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.85-90, 1996-02-29 (Released:2011-03-02)
参考文献数
46
被引用文献数
1
著者
植村 和正 井口 昭久
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.116-120, 1999-09-13 (Released:2017-04-27)
参考文献数
10

「終末期医療」における患者の「自己決定」に関して、我が国における過去の「安楽死」事件の判例を検証.考察した。これまで7件の「安楽死」事件はいずれも有罪となっている。判決の法的根拠となった昭和37年の名古屋高裁の「六要件」の理論的背景は「人道(生命尊重)主義」である。平成7年の横浜地裁判決における「四要件」の法的根拠として「自己決定権」の理論が挙げられたが、「緊急避難の法理」も適用しており、従来の「生命尊重」優位の思想が引き継がれていることにも留意しなければならない。現時点では「安楽死」を法律が許容する余地は極めて小さい。いわゆる「尊厳死」に関しては、横浜地裁判決において「自己決定権」の理論と「医師の治療義務の限界」が法的根拠として挙げられた。微妙な判断が医師に委ねられた「法的不安定さ」を「科学的客観性」によって補っていると解釈できる。今後の検討は、人の生死における「尊厳」とは何か、「自己決定権」の遡及範囲、患者の「最良の利益」を保障するための方策、に向かうべきものと思われる。
著者
榎 裕美 杉山 みち子 井澤 幸子 廣瀬 貴久 長谷川 潤 井口 昭久 葛谷 雅文
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.547-553, 2014-11-25 (Released:2015-02-26)
参考文献数
24
被引用文献数
6

目的:本研究の目的は,神奈川県および愛知県において構築したコホート(the KANAGAWA-AICHI Disabled Elderly Cohort(KAIDEC))の横断研究として,在宅療養高齢者の栄養障害の要因を明らかにすることである.対象および方法:対象は,KAIDEC Studyに登録された居宅介護支援事業所の居宅サービス利用者1,142名(男性460名 女性682名 年齢81.2±8.7歳)である.登録時の調査は,要介護度等の基本情報,低栄養評価(Mini Nutritional Assessment short form:MNA®-SF)および摂食・嚥下障害(Dysphagia Severity Scale:DSS)の状況等の調査を実施した.慢性疾患については,疾患別に分類し,さらに併存症の指標であるCharlson Comorbidity Indexを用いて点数化を行った.MNA®-SFの3群間の比較は,χ二乗検定および一元配置分散分析を行い,栄養障害の要因分析は,MNA®-SFを二分変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った.結果:MNA®-SFによる低栄養のスクリーニング結果は,栄養状態が「良好」と評価されたのは全体の27.8%,「低栄養のリスクあり」は55.4%,「低栄養」は16.7%であった.二項ロジスティック回帰分析(「低栄養」とそれ以外の二項)の多変量解析の結果,低栄養と関連する有意な因子は,ADLが低い,過去3カ月以内の入院歴がある,摂食・嚥下機能の低下,認知機能低下の因子であった.また,訪問診療および訪問介護の利用との関連も認められた.結論:居宅療養高齢者の低栄養は,ADL,入院歴,認知機能,摂食・嚥下機能との関連が強く認められた.
著者
大西 丈二 益田 雄一郎 鈴木 裕介 石川 美由紀 近藤 高明 井口 昭久
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.641-648, 2004-11-30
被引用文献数
5 1

加齢に伴いこれまで担ってきた家庭的・社会的役割を喪失することの多い高齢者では,活動性が低下しやすく,時に身体的・精神的機能低下を引き起こしてしまうこともある。地域で行われる余暇活動の開発は高齢者の活動性やQuality of Life (QOL) の維持・向上に役立つものと思われるが,こうした余暇活動の効果はまだあまり実証されていない。今回われわれは農村部に居住する424名の高齢住民 (平均年齢71.6±4.8SD歳) を対象に,余暇活動を楽しむことと幸福感等との関連を明らかにするため調査を行った。調査項目として生活環境や,日常生活動作 (ADL) などの身体状況,外出の頻度,余暇活動を楽しいと感じる程度およびPGC主観的幸福感を含めた。この結果,楽しいと思う活動は「入浴」,「食事」,「テレビ」の順であった。余暇活動の中では「食事」や「入浴」を楽しむことがPGC主観的幸福感と正の関連を持ち,逆に「パチンコや麻雀などの賭けごと」を楽しむことは負の関連を示した。「動物の相手」を楽しむ者は閉じこもりが少なかった。PGC主観的幸福感を従属変数とする回帰分析では,人間関係の悩み,「パチンコや麻雀などの賭けごと」を楽しむこと,基本的ADL,体の痛み,独居を予測値とした有意なモデルが構築された。これらの結果は今後地域で高齢者の余暇活動を促進していくにあたり,有用な知見を与えた。
著者
葛谷 雅文 遠藤 英俊 梅垣 宏行 中尾 誠 丹羽 隆 熊谷 隆浩 牛田 洋一 鍋島 俊隆 下方 浩史 井口 昭久
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.363-370, 2000-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
18
被引用文献数
8 14

名古屋大学医学部附属病院老年科病棟と, 国立療養所中部病院高齢者包括医療病棟入院中の65歳以上の患者を対象に老年医学的総合評価 (ADL, Instrumental ADL, 認知機能, 情緒傾向, 社会的状態などを含む) と服薬コンプライアンス評価調査表を用い, 高齢者の服薬コンプライアンスに関与する因子を検討した. 2施設間の調査対象集団を比較すると, 中部病院で女性の割合が多く有意に高齢であった. さらに中部病院では Instrumental ADLが有意に低スコアーであった. 老年医学的総合評価項目と服薬コンプライアンス評価項目との検討では, 服薬管理者 (自己管理か非自己管理か) を規定している因子は主にADL, Instrumental ADL, 認知機能障害, うつ状態, コミュニケーション障害の有無であった. 服薬状況 (薬の飲みわすれ) は老年医学的総合評価項目のいずれにも有意な関係がなかったが, 用法の理解度, 薬効の理解度との関係は施設間で差を認めた. すなわち大学病院では服薬状況と用法, 薬効理解度との間に有意な関係を認めたが, 中部病院ではいずれも有意差を認めなかった. 服薬用法理解, 薬効理解度は Instrumental ADL, 認知機能, コミュニケーション能力, 集団行動能力と有意な関係にあった. 薬効理解度は教育歴とも有意な関係にあった. 2施設を比較すると多くの総合評価項目とコンプライアンスの関係は一致していた. 以上より, 高齢者の服薬コンプライアンスは患者の身体機能, 認知機能とは関係なく, 服薬用法, 薬効理解との関係が示唆された. このことは服薬指導の重要性が高齢者の服薬コンプライアンス向上に重要であることを再認識させる.
著者
植村 和正 井口 昭久
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.116-120, 1999-09-13
被引用文献数
1

「終末期医療」における患者の「自己決定」に関して、我が国における過去の「安楽死」事件の判例を検証.考察した。これまで7件の「安楽死」事件はいずれも有罪となっている。判決の法的根拠となった昭和37年の名古屋高裁の「六要件」の理論的背景は「人道(生命尊重)主義」である。平成7年の横浜地裁判決における「四要件」の法的根拠として「自己決定権」の理論が挙げられたが、「緊急避難の法理」も適用しており、従来の「生命尊重」優位の思想が引き継がれていることにも留意しなければならない。現時点では「安楽死」を法律が許容する余地は極めて小さい。いわゆる「尊厳死」に関しては、横浜地裁判決において「自己決定権」の理論と「医師の治療義務の限界」が法的根拠として挙げられた。微妙な判断が医師に委ねられた「法的不安定さ」を「科学的客観性」によって補っていると解釈できる。今後の検討は、人の生死における「尊厳」とは何か、「自己決定権」の遡及範囲、患者の「最良の利益」を保障するための方策、に向かうべきものと思われる。