著者
越野 剛
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.31, pp.15-29, 1999-10-01

19世紀前半のロマン主義時代はオカルト思想の流行と結びつけて語られることが多いが, ロシア社会にとって, それは戦争や災害が相次いだ時代だった。ナポレオンのモスクワ遠征(1812)とデカプリストの反乱(1825)をはさんで, ペテルブルクの大洪水(1824)やコレラの大流行(1830-31)があった。1830年代にはビエラ彗星(1832)とハレー彗星(1835)が接近し, これが地球に衝突するのではないかという噂が社交界に広まった。ノストラダムスやスウェーデンボリなどの終末論の流行は, こうしたことと無関係ではないだろう。 時の皇帝アレクサンドル1世は, 啓蒙主義的な教育を受けて育ったが, 晩年は神秘主義に傾いていた。メスメリズムなどに造詣の深いクリュデネル男爵夫人との交流は神聖同盟結成などの政策にまで影響を与えたといわれる。宮廷でもオカルトが大流行し, タタリノヴァ夫人や去勢派教徒のコンドラチイ・セリヴァノフの集会に貴族や高官が押し寄せた。そこでは教祖のカリスマや聖書の唱和, 踊りなどにより信者たちがpaрадениеとよばれる熱狂に達し, 神の啓示を受けていた。皇帝の親友で教育大臣(のちに宗教大臣を兼務)でもあったA.H.ゴリーツィン公爵も神秘主義に寛容だった。単純さを好む粗暴な武人アラクチェーエフはオカルティストたちを宮廷から追い出そうとしたが, オカルト熱は社会に深く根を張っていた。聖書の普及を目的とする聖書協会や, 啓蒙主義的な出自を持つフリーメーソンが, オカルト流行の温床に変わっていた。骨相学, メスメリズム, 幽霊, サン・マルタン主義, 予言, 民間信仰などが渾然となって話題に上り, ドイツの自然哲学がそれらを体系的に説明していた。 本論文は, メスメリズムとロシア文学の関わりを考察することによって, ロマン主義時代のロシア社会の一面を明らかにしようとするものである。

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