著者
越野 剛
出版者
北海道大学スラブ研究センター
雑誌
スラブ・ユーラシア研究報告集
巻号頁・発行日
vol.1, pp.21-34, 2008-12

共産圏の日常世界. 望月哲男編
著者
武田 雅哉 濱田 麻矢 越野 剛 加部 勇一郎 田村 容子 向後 恵里子 藤井 得弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、中国における「乳房」の表象を、中華圏・ロシア・日本の各地域における表象と比較し、非西欧圏・社会主義圏における「乳房」イメージの生成、交流、変遷について明らかにするものである。分析の中心となるのは、19世紀から20世紀にかけての画報(絵入り新聞)・連環画(絵物語)・ポスターなどの図像資料、および新聞記事や文学などの文字資料である。研究成果は、株式会社ワコールの主催する「乳房文化研究会」の定例研究会「アジアにおける乳房観 Part3~中国人女性の身体意識と文化・ファッション~」において発表したほか、書籍として刊行予定である。
著者
越野 剛
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

今年度は三年間の研究の成果をまとめ、社会に還元するようなかたちで総括的な仕事をいくつか行うことができた。北海道大学スラブ研究センターの主催した市民向け公開講座「拡大する東欧」の中で、チェルノブイリ原発事故について講演した。その内容については雑誌「しゃりばり」およびスラブ研究センターのホームページに掲載されている。これまでの研究で得た成果を用いながら、現代ベラルーシの国民形成にとってチェルノブイリ事故が大きな影響を及ぼしていることを説明している。チェルノブイリの医療支援に長年携わっている長崎医大の山下俊一先生のイニシアチブにより、ベラルーシの詩人リホール・バラドゥーリンの作品を翻訳することができた(『バラドゥーリン詩集:風に祈りを』越野剛訳、春風社、2007年)。バラドゥーリンはベラルーシの代表的な詩人の一人で、ノーベル文学賞候補としてベラルーシ作家同盟から推薦されたこともある。今回訳出した詩の多くにはチェルノブイリ原発事故や放射能の恐怖のもとで暮らす人々の生活が描かれている。2月には3週間のモスクワ出張を行い、国立図書館などで資料を収集した。チェルノブイリ原発事故だけではなく、災害の記憶と結びついて連想されるような歴史的事件にも関心を広げるように努めた。とりわけ第二次世界大戦とナポレオン戦争の記憶はロシア・ウクライナ・ベラルーシ地域の人々にとって重要な意味を持っており、今後の研究にもつなげていきたい。
著者
越野 剛
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.31, pp.15-29, 1999-10

19世紀前半のロマン主義時代はオカルト思想の流行と結びつけて語られることが多いが, ロシア社会にとって, それは戦争や災害が相次いだ時代だった。ナポレオンのモスクワ遠征(1812)とデカプリストの反乱(1825)をはさんで, ペテルブルクの大洪水(1824)やコレラの大流行(1830-31)があった。1830年代にはビエラ彗星(1832)とハレー彗星(1835)が接近し, これが地球に衝突するのではないかという噂が社交界に広まった。ノストラダムスやスウェーデンボリなどの終末論の流行は, こうしたことと無関係ではないだろう。 時の皇帝アレクサンドル1世は, 啓蒙主義的な教育を受けて育ったが, 晩年は神秘主義に傾いていた。メスメリズムなどに造詣の深いクリュデネル男爵夫人との交流は神聖同盟結成などの政策にまで影響を与えたといわれる。宮廷でもオカルトが大流行し, タタリノヴァ夫人や去勢派教徒のコンドラチイ・セリヴァノフの集会に貴族や高官が押し寄せた。そこでは教祖のカリスマや聖書の唱和, 踊りなどにより信者たちがpaрадениеとよばれる熱狂に達し, 神の啓示を受けていた。皇帝の親友で教育大臣(のちに宗教大臣を兼務)でもあったA.H.ゴリーツィン公爵も神秘主義に寛容だった。単純さを好む粗暴な武人アラクチェーエフはオカルティストたちを宮廷から追い出そうとしたが, オカルト熱は社会に深く根を張っていた。聖書の普及を目的とする聖書協会や, 啓蒙主義的な出自を持つフリーメーソンが, オカルト流行の温床に変わっていた。骨相学, メスメリズム, 幽霊, サン・マルタン主義, 予言, 民間信仰などが渾然となって話題に上り, ドイツの自然哲学がそれらを体系的に説明していた。 本論文は, メスメリズムとロシア文学の関わりを考察することによって, ロマン主義時代のロシア社会の一面を明らかにしようとするものである。
著者
亀山 郁夫 白井 史人 林 良児 沼野 充義 甲斐 清高 野谷 文昭 梅垣 昌子 藤井 省三 高橋 健一郎 齋須 直人 望月 哲男 番場 俊 越野 剛
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ロシアの作家フョードル・ドストエフスキーの文学のもつ世界的意義について、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンをキー概念としつつ、主に2つの観点から解明する。Ⅰ、アレクサンドル二世暗殺を頂点とする19世紀ロシアの社会と人間が陥った危機の諸相とドストエフスキー文学の関連性を、歴史、宗教、文学、人間の観点から明らかにし、Ⅱ、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンが、世界諸地域の文学及び表象文化(映画、演劇、美術ほか)にどう受け継がれ、再生産されたかを明らかにする。後者の研究においては、「世界のドストエフスキー表象」と題するデータベース化を目指している。
著者
越野 剛
出版者
日本スラヴ・東欧学会
雑誌
Japanese Slavic and East European studies (ISSN:03891186)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.43-56, 2001-03-31

ドストエフスキーの作品における人間の心理描写は、フロイト流の精神分析の視点からアプローチされることが多い。しかし作家と同時代の精神医学が創作に与えた影響の方が歴史的には重要である。F.A.メスメルを創始者とする動物磁気説(後の催眠術)は、19世紀にすでに人間の無意識の現象を発見しており、ロマン派の文学や自然哲学に大きな影響を与えた。ドストエフスキーはK.G.カールスの無意識論やホフマン、バルザック、グレチ、V.オドーエフスキー等の文学作品を通じてメスメルの説を知っていた。当時の文学作品に特徴的な催眠術のモチーフは、催眠状態における幻覚や無意識の行為、そして視線の持つ磁気的な力のふたつであった。その点でドストエフスキーの初期作品のひとつ、『主婦』は分析の対象として最もふさわしい。『主婦』のプロットの中心は、3人の主要登場人物、オルドゥイノフ、カテリーナ、ムーリンの間の視線による心理的闘争である。中でもムーリンは邪悪な眼差しの描写で際立っている。ムーリンが催眠術師の役割を担っているとするなら、無意識のままに行為し幻覚を見るオルドゥイノフは催眠をかけられやすいタイプといえる。ただし3 人の力関係は一方的なものではなく、しばしば逆転し、互いに催眠術をかけ合っていると見なすことができる。同じような構図は『白痴』のムイシュキン、ナスターシャ、ロゴージンの関係にも当てはまる。19世紀の中頃、催眠術はオカルト的な傾向を批判され、医学者からは敬遠された。ドストエフスキーは『主婦』や『白痴』の中で、そのモチーフは明かであるにもかかわらず、催眠術の用語を直接には使用していない。一方で『分身』や『虐げられた人々』ではそうした言葉が必ずコミカルな状況で用いられ、テキストにロマン主義文学のパロディーという性格を与えている。ドストエフスキーは催眠術(動物磁気説)のテーマを慎重に扱いつつも、実証主義的・唯物論的な同時代の医学では見逃されるような人間の深層心理を描写する手段として重視していたのである。
著者
望月 哲男 越野 剛 後藤 正憲 鈴木 正美 鳥山 祐介 長縄 宣博 中村 唯史 沼野 充義 野町 素己 松里 公孝
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ヴォルガ地域の文化的な様態を、各流域の民族・宗教文化的特徴、および中世期から現代までの複雑な歴史的経緯を踏まえて整理し、包括的文化圏としてのヴォルガ地域像を解明した。ヴォルガ河の表象にみられる多義性・多面性とその変遷を、18世紀以降の文芸の諸ジャンルにおいて検討し、その特徴や文化的機能を分析した。近現代の宗教・文化思想を題材に、東西文化論におけるヴォルガ地域の特徴と機能を整理した。
著者
越野 剛 田村 容子 村田 裕和 今井 昭夫 梅津 紀雄 杉村 安幾子 久野 量一 坂川 直也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

一年目は「前期社会主義」と「人の移動」、二年目は「後期社会主義」と「翻訳・翻案」、 三年目は「ポスト社会主義」と「ノスタルジー・記憶」をテーマにした研究会を国内で開催 する。各年度ごとに1名程度の海外の関連分野の専門家を招へいするほか、最終年度には日 本国内で国際シンポジウムを開催する。研究成果は国内外の学会で積極的に発表し、日本語および英語で論集として刊行する。
著者
阿部 賢一 小椋 彩 井上 暁子 加藤 有子 野町 素己 越野 剛
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

国民文学の枠組みでの研究、あるいは同様な枠組み同士の比較検討がこれまで主流であったが、本研究はそのような国民文学の枠組みから逸脱する3つの視点(「移動の文学」、「文学史の書き換え」、「ミクロ・ネーションの文学」)に着目し、個別の現地調査の他、国内外の研究者とともに研究会、シンポジウムを開催した。その結果、3つの視点の有効性を確認できたほか、シェンゲン以降の移動の問題(政治学)、国民文学史の位相(歴史学)、マイノリティの記述の問題(文化研究)といったそのほかの問題系およびほかの研究分野と隣接している問題点や研究の可能性を国内外の研究者と共有し、一定の成果をあげた。
著者
望月 恒子 諫早 勇一 中村 唯史 岩本 和久 谷古宇 尚 越野 剛 井澗 裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「辺境と異境」という視点からロシア文化の研究を行った。具体的には、第一に、極東、サハリンなどの辺境と中央(モスクワ、ヨーロッパ・ロシア)との文化的相互作用を研究した。第二に、中国・日本やヨーロッパにおける亡命ロシア社会の文化活動について、文学、美術、宗教など多岐にわたる分野で、その特徴を調査研究した。非中心といえる「辺境と異境」を視点とすることによって、ロシア文化を包括的に捉えることができた。
著者
望月 恒子 諫早 勇一 中村 唯史 岩本 和久 宮川 絹代 井澗 裕 イコンニコヴァ E.A. 越野 剛 塚田 力
出版者
北海道大学大学院文学研究科
巻号頁・発行日
2010-03-31

平成21-24年度科学研究費補助金 基盤研究(B)(課題番号:21320061)研究成果報告書
著者
越野 剛
出版者
日本ロシア文学会
雑誌
ロシア語ロシア文学研究 (ISSN:03873277)
巻号頁・発行日
no.36, pp.17-24, 2004-09-15

Историческая перемена в понимании индивидов, одержимых бесом (кликуш) и основателя ислама Мухаммеда (Магомета) в России тесно связана с научной и культурной историей трактовки эпилепсин. В древности падучая болезнь (эпилепсия или истерия) часто трактовалась как вселение сверхьестественной силы в человеческое тело, но в <<просвещенном>> 18-ом веке элитарная часть общества стала обвинять бесноватых обмане, <<лжекликушестве>>. В 19-ом веке такие ученые-этнографы, как А. Н. Афанасьев, И. Г. Прыжов, С. В. Максимов и другие видели в клнкушестве иатологические явления, но роковая болезнь также иногда считалась притворной. Достоевкий в романе <<Братья Карамазовы>> предлагает разные трактовки кликушества (<<просветительную>> и медицинскую). В развитии главной сножетной линии романа мотив болезни связан с религиозными темами: кризис веры и чудо исцеления. В христианском мире основатель ислама представлялся лжепророком и обманщиком, но в 19-ом веке некоторые европейские историки начали рассматривать его как выдающую историческую фигуру. По их соображениям легенда о Мухаммеде, больном эпилепсией подтверждает тот факт, что великий пророк ислама в действительности испытывал религиозные галлюцинации. Позитивное понимание эпилептика Мухаммеда помагало Достоевскому, страдающему от амбивалентной оценки своей болезни, в создании образа эпилептическото приступа как блаженного переживания в романах <<Идиот>> и <<Бесы>>. Концепция болезни в образах кликуш и исламского пророка подвергалась многократному пересмотру и оказывала широкое влияние в истории науки и культуры России. Значительное влияние оказала она на жизнь и творчество ф. м. Достоевского.