著者
広瀬 健一郎 丸谷 知己
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.68, pp.p73-84, 1993-03

山地河川においてヤマメ(Oncorhynchus masou masou)が生存システムを確立するためには,産卵空間を備えていることがきわめて重要な条件である.しかし,山地河川では,河床が急勾配であることに起因して時間的にも空間的にも流れが細かく変化し,それに応じて多様なスケールで河床変動が生じている.本研究の目的は,多様な河床地形の位置的な変化と産卵空間との関係を物理的に明らかにすることを目的とする.そのために瀬と淵とが連続して河床地形をつくる堆積作用の卓越した区間において,水深変化,流速変化および淵における底質の砂礫についての粒径変化を分析した.その結果,ヤマメの産卵床は,フルード数が1の常流域と射流域の間に位置し,しかも一定の粒径組成をもつ粗砂,細礫,礫で満たされていることが必要なことがわかった.河川地形学でいうプール―ステップが小規模な河床変動によって形成されており,このような空間はそのプール下端郡に見られること,さらにそのプールは中規模の河床変動によって形成される体積の大きいプールの連続区間において見られることがわかった.

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