著者
広瀬 健一郎 丸谷 知己
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.68, pp.p73-84, 1993-03

山地河川においてヤマメ(Oncorhynchus masou masou)が生存システムを確立するためには,産卵空間を備えていることがきわめて重要な条件である.しかし,山地河川では,河床が急勾配であることに起因して時間的にも空間的にも流れが細かく変化し,それに応じて多様なスケールで河床変動が生じている.本研究の目的は,多様な河床地形の位置的な変化と産卵空間との関係を物理的に明らかにすることを目的とする.そのために瀬と淵とが連続して河床地形をつくる堆積作用の卓越した区間において,水深変化,流速変化および淵における底質の砂礫についての粒径変化を分析した.その結果,ヤマメの産卵床は,フルード数が1の常流域と射流域の間に位置し,しかも一定の粒径組成をもつ粗砂,細礫,礫で満たされていることが必要なことがわかった.河川地形学でいうプール―ステップが小規模な河床変動によって形成されており,このような空間はそのプール下端郡に見られること,さらにそのプールは中規模の河床変動によって形成される体積の大きいプールの連続区間において見られることがわかった.
著者
櫻木 まゆみ 丸谷 知己 土肥 昭夫
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.147-152, 1999-05-16
被引用文献数
3

九州山地の大藪川流域(520ha)において, シカの生息密度や分布域の変化を樹木年代学的手法により再現した。幼齢造林地における枝葉被食木率と糞粒密度との関係やこれまでの研究例から, 樹皮被食木率が過去のシカ生息密度の指標として有効であることを示した。林齢と糞粒密度の関係から, 4〜10年生の幼齢造林地がシカの環境収容力が高いことを明らかにした。流域における1982〜1991年の幼齢造林地の増加は, 樹皮被食木率の増加と一致していた。1992年以降の幼齢造林地の減少により樹皮被食木率はさらに高くなった。この結果から, 幼齢造林地の拡大は環境収容力の増大とそれにともなうシカの集中を引き起こしたこと, さらに生息密度の増加とその後の幼齢造林地の減少によって, 採食圧が高まりシカが流域全体に分散したプロセスが明らかにされた。造林の規模や配置がシカの生息密度や分布域の変化に大きく影響していることから, 被害地におけるシカの増加プロセスを明らかにし, その各時期に対応した被害防止対策の必要性が示唆された。
著者
中島 勇喜 林田 光祐 阿子島 功 江崎 次夫 吉崎 真司 丸谷 知己 眞板 秀二 木村 正信 井上 章二 岡田 穣 小林 範之 坂本 知己 柳原 敦 阿子島 功 江崎 次夫 吉崎 真司 丸谷 知己 眞板 秀二 木村 正信 井上 章二 岡田 穣 小林 範之 坂本 知己 柳原 敦
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

2004年12月に発生したインド洋大津波および2007年4月に発生したソロモン諸島での津波による被害地を調査し、津波に対する海岸林の被害軽減効果を検証した。その結果、海岸林による漂流物の移動の阻止、津波の波力の減殺、よじ登り・すがりつき効果が確認できた。さらに、被害軽減効果と海岸林の組成や構造は海岸地形に大きく依存していることから、地形を考慮した海岸林の保全が津波被害軽減に有効であることがわかった。