著者
内海 泰弘 村田 育恵 椎葉 康喜 宮島 裕子 井上 晋
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.91, pp.15-18, 2010-03

宮崎県椎葉村大河内地区における植物の伝統的な利用法と方言を記載した。これまでに高木類と低木類について報告してきたが,本報告ではつる植物32種とタケ類8種およびシュロについて複数の年長者からの聞き取り調査結果をまとめた。つる植物のおもな用途は縄,器具材,食材であり,タケ類のおもな用途は建築材,器具材,筍であった。つる植物で縄に用いられたのは5種あり,つるの物理的性質に応じて使い分けられていた。タケ類の中ではハチクとマダケが重要種で屋根材や生活用品の材料として重用された。他の多くのつる植物とタケ類は季節ごとに多様な食料として地域の生活を支えていた。
著者
内海 泰弘 安田 悠子 椎葉 康喜 山内 康平
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.96, pp.20-27, 2015-03

伝統的な生活様式が維持されている宮崎県椎葉村大河内地区において,シダ植物5種,種子植物64種と4類を含む草本植物の伝統的な利用法を複数の年長者から聞き取り調査した。草本植物の用途として最も多かったのは食用であり,24種が利用され,葉や若いシュートといった一般的な山菜としての活用だけなく,4種の根茎からデンプンを得ることで,貴重な食料源としていた。薬草として用いられていたのは9種あり,医薬品が十分にない環境で,様々な効能を見いだし活用していた。逆に毒草として取り扱われていた種は5種存在した。資材となっていた種は7種あり,これらから屋根材,縄,蓑,草鞋など生活に不可欠な物資を得ていた。
著者
榎木 勉 久保田 勝義 鍜治 清弘 長 慶一郎 山内 康平 椎葉 康喜 緒方 健人 菱 拓雄 田代 直明
出版者
九州大学農学部附属演習林
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.98, pp.17-24, 2017-03

九州大学宮崎演習林内の冷温帯針広混交林に1971年に設定した調査地を2013年に復元し,森林構造と種組成を再調査した。1971年に林床を被覆していたスズタケは2013年には完全に消失した。その他の下層の木本も,シカが摂食しないシキミとアセビ以外は消失した。樹高2m 以上の木本も種数,幹数とも大きく減少した。特に胸高直径5cm 未満の木本は幹数が20%程度まで減少した。胸高直径5cm 以上の針葉樹は,同サイズの広葉樹よりも成長速度が速かった。死亡率は落葉広葉樹が常緑針葉樹や常緑広葉樹よりも低かった。モミはツガよりも成長速度が速く,死亡率が高かった。モミの優占度はツガよりも大きかったが,今後はツガの優占度が増加するかもしれない。しかし,シキミとアセビ以外の新規加入がみられないため,さらに長期的にはシキミとアセビが優占する林分になる可能性がある。In 2013, we reestablished study plots established in1971 in a cool temperate mixed forest in the Shiiba Research Forest, Kyushu University. We identified the trees measured in the former study, and measured stand structure and species composition again. The understory had mostly been denuded by sika deer browsing in 2013, while Sasa borealis covered the forest floor thickly in 1971. The number of species and stems of trees taller than 2m in height also decreased largely. Especially, the stem numbers of trees smaller than 5cm in diameter at breast height (DBH) decreased up to 20%. The growth rate of conifer larger than or equal to 5cm in DBH was larger than those of broad-leaved trees. The mortality of deciduous trees was smaller than those of evergreen trees. The larger growth rate of Abies firma corresponded to the larger dominance of A. firma than Tsuga sieboldii. The low mortality of T. sieboldii suggested that the dominance of T. sieboldii would increase in the future. Further, the stand would be dominated by two species sika deer cannot consume, Illicium anisatum and Pieris japonica subsp. japonica, because no species other than the two species regenerated in the stands.
著者
椎葉 康喜 内海 泰弘
出版者
九州大学農学部附属演習林
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.90, pp.99-111, 2009-03

九州大学農学部附属演習林宮崎演習林にはその設立以前から様々な人々が生活の場として活用されてきた歴史があり, 長い時間の中で多くの地名が付されてきた. これらの地名は現在でも教育・研究活動や森林管理業務などに活用されている. 地名があることで林班や小班といった一定の広がりを持つ指標では説明が困難な「点や線」としての位置説明が可能になり, 踏査や現場の状況説明が容易となる. しかし1939年の宮崎演習林設立以来, 地名に関するまとまった記載はこれまで存在していない. 地名に詳しい年長者達が少なくなり, 教職員や関係者の異動などが以前と比べて多くなったため, これまで口承されてきた地名が年々消失してしまう可能性が危惧されている. そこで本報告では現在使われている地名に加えて, 以前使われていた地名についても関係者に聞き取り調査を行い, 宮崎演習林内に在する92の地名についてその由来とともに記載した。Shiiba Research Forest, Kyushu University Forest, Kyushu University was settled on Okawachi area of Shiiba village in 1939. Okawachi area was one of the center of Shiiba village and has a long history from Muromachi Period. Number of geographical names in Shiiba Research Forest represent the history and these names are still used for research, education and forest management. This report describes not only the currently using geographical names but also the disappearing past names and their origin.
著者
内海 泰弘 村田 育恵 椎葉 康喜 井上 晋
出版者
九州大学農学部附属演習林
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.88, pp.45-56, 2007-03

日本民俗学発祥の地とも呼ばれ,伝統的な植物民俗文化を維持している宮崎県椎葉村大河内地区において,生育する高木(針葉樹10種,広葉樹59種と6類)の伝統的な利用法とその方言について集落の複数の年長者から聞き取り調査を行い記録した.その結果,建築材として用いる場合は木材の強度,耐久性,加工性などの要件を組み合わせて部材に応じた樹種の選択が行われていた.一方,器具材には材の重堅な樹種はその重堅さを,軽軟な樹種はその軽軟さを生かす利用が図られていた.また,ほだ木にはキノコとその発生する樹種との対応関係を把握した上で,ほだ木としての耐久性と利便性から状況に応じて多くの樹種を利用してきたことが明らかになった.Shiiba village has been believed to be the birthplace of Japanese folklore. The traditional name and usage of 69 tree species growing in Okawachi Settlement, Shiiba Village were described based on the hearing investigation from the learned elders of the settlement. Construction wood was chosen mainly from coniferous species in view of the strength, endurance and workability. Furniture and instrument wood were selected from the degree of hardness and density in accordance with the purpose of usage. The tree for mushroom cultivation was determined depending on the compatibility with the fungi and durability of the mushroom bed.
著者
広瀬 健一郎 丸谷 知己
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.68, pp.p73-84, 1993-03

山地河川においてヤマメ(Oncorhynchus masou masou)が生存システムを確立するためには,産卵空間を備えていることがきわめて重要な条件である.しかし,山地河川では,河床が急勾配であることに起因して時間的にも空間的にも流れが細かく変化し,それに応じて多様なスケールで河床変動が生じている.本研究の目的は,多様な河床地形の位置的な変化と産卵空間との関係を物理的に明らかにすることを目的とする.そのために瀬と淵とが連続して河床地形をつくる堆積作用の卓越した区間において,水深変化,流速変化および淵における底質の砂礫についての粒径変化を分析した.その結果,ヤマメの産卵床は,フルード数が1の常流域と射流域の間に位置し,しかも一定の粒径組成をもつ粗砂,細礫,礫で満たされていることが必要なことがわかった.河川地形学でいうプール―ステップが小規模な河床変動によって形成されており,このような空間はそのプール下端郡に見られること,さらにそのプールは中規模の河床変動によって形成される体積の大きいプールの連続区間において見られることがわかった.
著者
加藤 鐵夫
出版者
九州大学農学部附属演習林
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.85, pp.55-78, 2004-03

農学部附属演習林では,平成15年6月17目(火),加藤鐵夫林野庁長官を講師に招き,「日本の森林整備の方向と課題」についての特別講演会を開催し,約130名の教職員及び学生が参加しました.初めに,小川演習林長から,大学演習林をとりまく情勢についての挨拶がありました.続いて,加藤長官から平成13年度の森林・林業基本法の制定に伴う森林政策の現状と施業,林野庁の地球温暖化防止森林吸収源十ヵ年対策の策定(生産林から環境林への転換,バイオマス・ニッポン総合戦略の推進,地域との共生等),国際的な林業事情,木材価格の現状等について,林業政策の責任者として具体的に,わかりやすい講演があり,これに対し,学生から絶滅危惧種の保護の考え,シカの被害と保護の考え等についての質疑がありました.以上,当日の行われた講演内容を演習林報告に記載し,森林にたずさわる教育・研究者及び院生・学生諸君の参考に供したいと思います.
著者
太田 和樹 増谷 利博 今田 盛生
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.71, pp.p13-25, 1994-12
被引用文献数
3

九州大学宮崎演習林では細胞式皆伐作業法の適用により,天然生林からスギ・ヒノキ人工林への林種転換が行われてきたが,近年,シカの食害により不成績造林地が増加していることから,代替案を検討する必要に迫られている.そこで,代替案検討の第1ステップとして,対象天然林内に群状に分布するアカマツ混交林の取り扱い方を考えた場合,その林分構造について検討する必要がある.このようなことから,本報告は天然生アカマツ混交林の林型区分を行い,各林型ごとの特徴を明らかにすることを目的とし,径級別・樹種別の材積及び本数を変戯とするクラスター分析により林型区分を行い,類型化された林型の特徴を直径及び樹高の順位系列によって検討した.クラスター分析を行った結果,天然生アカマツ混交林内に設定した34のプロットは林型A~Hの8つの林型に分類された.次に,直径及び樹高順位系列を用いて各林型の林分構造の特徴を明らかにした結果,主に樹種構成,径級別本数及び材積で分類され,天然生アカマツ混交林の取り扱いについて検討を行うための林型区分として適切であった.さらに,林型ごとに今後の取り扱いについて検討した結果,林型G,Hで木材生産が可能であるが,林型A,Bでは不可能であることが明らかになった.その他の林塾では,伐採後の成林の問題もしくは経済性の問題についてさらに検討する必要があることが示唆された.
著者
大賀 祥治
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.1-90, 1989-11
被引用文献数
3

シイタケ菌とヒポクレア菌などの害菌の間には拮抗現象が期待できることを見出した.この場合,特にシイタケ菌の蔓延率が重要な因子となり,蔓延が進み培地表面を完全に覆った状態であれば,ヒポクレア菌の侵入に対し,十分抵抗性を示す結果を得た.また,他の因子として,培養温度,培地含水率,pH,ヒポクレア菌の胞子濃度等も重要な因子であった.これらの結果から,より速くシイタケ菌糸を蔓延させ高い菌糸密度を保つことが害菌対策上,極めて重要であることが明らかになった.シイタケ菌の初期蔓延を活発にし,培地をより早く完熟化すること,また害菌の胞子濃度が低い環境を選定することがそれぞれ重要事項であることが示唆された.そこで,シイタケ菌糸を積極的に蔓延させる手段として,手近に得られる蔬菜類を中心とした天然物の熱水抽出物,パルプ廃液成分,クロレラ熱水抽出物等を添加物として取り上げ,まず室内試験を中心として検討した.シイタケ菌糸の蔓延を著しく促進する作用を示すものが見出された.これらは,寒天,木粉,小径木等培地形態の違いにより,異なった挙動を示した.寒天培地ではパルプ廃液成分,クロレラ熱水抽出物,木粉培地ではクロレラ粉末,ネギ煎汁,小径木ではニンジン煎汁,ミカン煎汁がそれぞれ有効であった.そして,大型の鋸屑培養,すなわち菌床栽培の手法で検討を行った.添加物としてネギ煎汁を投与することで,菌糸の蔓延に対し促進あるいは刺激作用を加えたものは完熟菌床に至る期間が短く,しかも,後続する子実体発生に際しても良好な効果を持続し,発生量の増加が期待できることが分った.次に,添加物投与による効果をほだ木でのシイタケ栽培に適用することを考えた.ところが,ほだ木内におけるシイタケ菌の蔓延度,特に菌糸密度の高さを示す熟度を正確に知る適当な方法がなく,室内試験で明らかにした添加物の影響についての判定が困難であった.シイタケ栽培では,熟度を正確に把握することが子実体発生のための必須条件となっているにもかかわらず,判定法がこれまでに確立されていなかった.そこで,菌糸蔓延度の判定法を確立することが添加物投与の検討を行ううえで必要事項と思われた.呈色反応,炭酸ガス放出盛量,培地表面の白色度を測定することが有効な方法であることを認めた.特に,pH指示薬であるブロモフェノールブルーを噴霧した際の呈色反応により,簡易にしかも,正確にほだ木の菌体量を把握できることを明らかにした.5年間のほだ木栽培での結果,添加物投与の効果が野外試験においても認められた.添加物投与により菌糸の初期蔓延が活発になったほだ木では,ほだ木内により速くシイタケ菌糸が蔓延し,完熟ほだ木になるまでの期間が短縮された.その結果として,害菌による被害率が低くなり,さらに後続する子実体発生量が多くなった。効果はミズナラ,コナラ,クヌギ,アラカシ,ツブラジイ,マテバシイおよびタブノキの7樹種のうち,ほとんどのもので確認された。子実体発生試験はミズナラほだ木で行ったが分散分析の結果,有意差が認められたものが多く,しかも子実体の形質が優れ,特に菌傘の厚さが増すという結果が得られた.添加物の投与時期は種駒接種と同時に行うのが,最も効果が期待できることを明らかにした.菌糸が蔓延して完熟ほだ木になった時点では添加物投与を行っても効果はみられず,この段階では保水力の高い物質を加えることにより子実体発生量が増加した.また,添加物を授与する手段として,脱脂綿に含浸させて種駒接横穴に挿入し,その上から直接種駒を打ち込む方法(脱脂綿挿入法)を新しく考案した。添加物としてはネギ煎汁が最も優れ,穫駒接種時の投与によりほだ木内への菌糸蔓延率が高まり,さらに子実体発生数が明らかに多くなり,きわだった効果をみせた。これまでの検討でシイタケ栽培における添加物として最も効果が高いネギ煎汁中に存在する生育活性化物質の単離,同定を行った。シイタケ歯の生育に対し,煎汁の固形分濃度が大きな因子となり,また,その作用は培地形態により異なる結果が得られた.ゲルろ過法により活性物質を分画でき,活性の主体は核酸関連物質であることが明らかになり,種々の分析でこれらは3'-AMP,アデノシンおよびアデニンであることが判明した。種々の核酸関連物質のうち,アデノシン,アデニン等がシイタケ菌の生育に対し,極めて高い促進効果を示すことを明らかにした.また,ネギ煎汁にはニンジン煎汁,モヤシ煎汁に比べ,これらの核酸成分の含有量が高いことが分った.さらに,ネギ煎汁に含有されるシスチンおよびシステイン等の含硫アミノ酸が活性を示し,アデノシンならびにアデニンと相乗効果を示した.これらの結果からネギ煎汁中のシイタケ薗生育活性化物質の主体はアデノシン,アデニン等の核酸関連物質とシスチン,システイン等の含硫アミノ酸であると考えられた.As a result of tests on the administration of additives in the production of the shiitake mushroom (Lentinus edodes (Berk.) Sing.), the following was made clear. 1. Antagonism of Shiitake Fungi with Hupocrea spp. Fungi An antagonistic phenomenon was discovered between shiitake fungi and Hypocrea spp., an injurious fungi. Namely, results showed if shiitake fungi did not completely cover the surface of a medium, such as an agar medium, Hypocrea spp, invaded the shiitake fungi. On the other hand, if the surface of the medium was covered throughout, the shiitake fungi showed sufficient resistance against Hypocrea, and shiitake fungi increased its biomass. Further, other important factors such as; culture temperature, the water content of a medium, pH, the amount of spores of Hypocrea spp. fungi or the like were also found. Accordingly, as a measure to protect shiitake fungi from injurious fungi, it is extremely important to grow shiitake fungi rapidly to keep a high mycelial biomass in the medium. Results indicate that initial activity of shiitake fungi is an important factor in protecting from an injurious fungi (Chapter I). 2. Effect of Additives in Indoor Tests As a means for promoting the growth of shiitake mycelium, several additives were tested, that is; hot water extracts of natural substances centering around vegetables; liquor-components from sulfite pulping (lignin carbohydrate complex sulfonate) ; hot water extract of chlorella; or the like. They were chosen to perform experiments in a laboratory, at first. The liquor components from sulfite pulping and chlorella extract were effective in the agar medium. Chlorella and welsh onion extracts were effective in the wood flour medium. Lastly, carrot and orange peel extracts were effective with the small log. Following tests for selecting proper additives, a sawdust substrate cultivation test was conducted. To promote the growth of mycelium, the administration of the welsh onion extract was applied as an additive, resulting in a shorter spawning period. Furthermore, successive growth of mycelium was positively affected in succeeding generations, resulting in an increase in the production of fruit bodies (Chapter II). 3. Determination of Mycelial Biomass An idea was pondered as to whether the administration of additives would promote the production of shiitake mushroom on natural bed log cultivations. There was no proper means, however, for accurately determining the mycelial biomass of shiitake fungi in a bed log. Therefore, it was difficult to judge the effect of additives discovered in indoor tests. In the production of shiitake mushroom, though the accurate determination of the mycelial biomass is an essential matter for the formation of a fruit body, a weighing method has not been established up to date. Therefore, the establishment of a method for judging the mycelial biomass was considered to be a necessary matter in order to perform an investigation on the administration of additives. Some methods were effective, that is; measuring color reaction; the evolution quantity of carbon dioxide; and, the surface whiteness of a medium. Especially, it was shown that the mycelial biomass in bed log could be simply and accurately determined by color reaction generated when bromophenol blue, a pH indicator, was sprayed (Chapter Ⅲ). 4. Effect of Additives in Field Tests The amount of fruit bodies harvested from natural bed logs was analyzed for five years. The effect on the administration of additives was confirmed in field tests. In bed logs having greater mycelial biomass, by means of the administration of additives, the spawn run time was shortened. As a result, the damage rate caused by Hypocrea spp. decreased and, further, in succeeding generations, the amount of fruit bodies was increased. This effect was cofirmed in almost all seven species of trees, that is; Quercus mongolica ; Q. serrata ; Q. acutissima ; Q. glauca ; Castanopsis cuspidata ; Pasania edulis ; and Persea thunbergii, Tests of fruit body production were conducted using a Q. mongolica bed log and, using a variance analysis, a significant difference was confirmed in many cases and, moreover, results showed that the size of fruit bodies was excellent and the pileus thickness was greatly increased. By performing the administration of additives simultaneously with the inoculation of a spawn plug, the maximum effect of generating fruit bodies will be achieved. On the other hand, if the additives are administered at a time when the mycelium covers the bed log completely, instead of administering them simultaneously with the inoculation of a spawn plug, no positive effects were confirmed. By adding a substance having a high water retentivity when the mycelium covers the bed log completely, it was found though, that the amount of fruit bodies was increased. Further, as a means for administering the additives, a mothod for inserting absorbent cotton, impregnated with additives, in a spawn plug inoculating hole and directly inoculating the spawn plug, was newly devised. As for the additives, the hot water extract of a welsh onion was most efficient and growth into the bed log was enhanced by the administration of the extract at the inoculation time of the spawn plug and, further, the amount of fruit body production was clearly increased and a marked effect was developed (Chapter Ⅳ). 5. Growth Activating Substances to Shiitake Fungi in Hot Water Extract of Welsh Onion On the basis of the foregoing tests, the growth activating substance present in the hot water extract of the welsh onion had the highest effect as an additive in the cultivation of shiitake. The concentration of extract becomes an important factor with respect to the growth of shiitake mycelium and, further, according to different medium, several results were obtained. Active substances could be fractionated by gel-filtration, it was mainly based on nucleic acid related substances. These substances were adenosine-3'-triphosphate, adenosine and adenine by various analytical methods, that is; colorimetric analysis; ultraviolet spectrum; thin-layer chromatography; high-performance liquid chromatography; and, gas chromatography-mass spectrometry. Adenosine, adenine or the like among various nucleic acid related substances showed extremely high growth promoting effects with respect to shiitake mycelium. Further, it was found out that the content of these nucleic acid components was high in the welsh onion extract as compared with extracts of carrot or bean sprout. Furthermore, sulfur-containing amino acids such as cystine, cysteine or analogues contained in the welsh onion extract showed activity and imparted synergistic effects to adenosine and adenine. From the results, the growth activating substances of shiitake mycelium in the welsh onion extract were based on nucleic acid related substances such as adenosine, adenine or the like and sulfur-containing amino acids such as cystine, cysteine or the like (Chapter V).
著者
扇 大輔 長 慶一郎 山内 康平 大崎 繁 田代 直明 古賀 信也
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.93, pp.28-36, 2012-03

平成18年10月7日午後から8日午前中にかけて台風並みに発達した低気圧により九州大学北海道演習林に大規模な風害が発生した。今後の資料とするため,ここではその被害概要についてまとめた。被害発生時,北海道演習林内では主に北ないし北北東方向から最大風速10m/s以上,瞬間最大風速20m/s以上の風が吹いたと推定された。被害は北海道演習林のほぼ全域にわたり発生し,被害面積158ha,被害推定本数48,481本,被害推定材積21,284m3に達した。今回の被害の特徴として,カラマツを中心とした針葉樹人工林,とくに40年生以上の壮齢林に大規模な風倒被害が発生したこと,被害が北東斜面の林分に集中し,風向とほぼ一致したこと,カラマツ林の被害形態は「根返り」が最も多く,次いで「傾斜・幹曲がり」で,「幹折れ」の被害はわずかであったこと等が挙げられた。
著者
光田 靖 高田 佳夏 溝上 展也
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.1-11, 2000-03
被引用文献数
1

パソコン上で作動するGISソフト(アメリカmicroimages社製 TNTmips)を用いて,3種類の作成方法でデジタルオルソフォトを作成し,その精度を比較した.2枚1組のステレオペア写真から発生させた数値地形図(Digital Elevation Model: DEM)を用いてオルソフォトを作成する方法1,既存している等高線をデジタイズしたベクターデータから作成したDEMを用いて作成する方法2,市販の数値地図50mメッシュ(標高)を用いて作成する方法3について,それぞれオルソフォトを作成した.作成したオルソフォトの精度を測定した結果,方法1の精度が最も良く,ついで方法2,3の順であった.また作成に関する手順や作業量について比較すると,方法2および3に比べ方法1が格段に手順も多く作業量も大きかった.これらの労力と作成されたデジタルオルソフォトの精度を考慮すると,方法3の作成法を用いてデジタルオルソフォトを作成することが最も効率的であると考えられた.次にGCP点数を7,68,96,237,327および365点と変えて作成したオルソフォトについては,GCP点数が多いほど精度が良くなるといった正の相関関係は見いだされなかったが,GCPがオルソフォトの精度に大きな影響を及ぼしていると考えられた.また作成したオルソフォトの精度を正確に評価することが難しいことが考察された.
著者
小川 滋 飯田 繁 井上 晋
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.93-130, 2000-03

九州大学演習林は,実際は,1912年(大正元年)当時の樺太演習林から始まり,続いて台湾,朝鮮の演習林が設置されている。すでに,「旧台湾演習林」,「旧南鮮演習林」については調査が行なわれており,ロシアの「旧樺太演習林」の調査が待望されていたところであるが,1年半の準備期間を経て1999年9月に現地調査が実現した。まず,現地調査の経緯や調査日程,旧樺太演習林の変遷,旧事務所跡地の変貌など,現在のサハリンの事情をまとめた。次いで,旧樺太演習林とその周辺について,50数年経過した植生の現状と樺太演習林当時の植生調査結果および北海道の植生との比較を行って,植生変遷の実態等についてまとめた。さらに,旧樺太演習林が如何なる管理状況に置かれているかを理解するために,最近のサハリンの国有林経営・管理の実態について資料を作成した。また,九州大学施設部に保管されていた旧樺太演習林の建造物の図面を複製し,解説を加えた。以上のように,1999年9月に行われた旧樺太演習林の調査について,経緯,訪問先,演習林の変遷,植物相,林業事情等をまとめて,将来のサハリンにおける森林・林業研究の資料とした。
著者
近藤 民雄 大賀 祥治
出版者
[九州大學農學部附属演習林]
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
no.92, pp.1-3, 2011-03

本総説では,マツタケについて宿主を用いないで菌床栽培するための要点について論説した。始発培地水分は低い方が好ましいこと,培地栄養分をできるだけ低くすること,相対湿度が重要な要因となることの3点を論考した。
著者
Kao Dana 飯田 繁 井上 晋 大賀 祥治
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.69-84, 2005-03

森林伐採が生態系の回復過程とマッチしない規模であるため,森林の破壊・細分化がもたらされている。熱帯林は1990年代においても毎年1,420万haの規模で減少が続いており,発展途上国では2000年の場合,森林のわずか5.5%しか計画的な管理が実施されていない。カンボジアの森林は,世界の熱帯林の一部を構成しているが,道路建設,木材生産,鉱業生産,農業開発などで過去30年間にわたり毎年0.6%の割合で森林が減少してきた。そこで本稿では,カンボジアにおけるコンセッション経営の問題点を明らかにする。問題点は,CFC林業会社から得たデータとモントリオールプロセスで示された基準との比較によって明らかにされ,評価される。評価基準は同プロセスの基準2(指標10~14: 森林生産力の維持)であり,評価対象は,カンボジアのコンセッション型林業経営で実施している輪伐期25年の管理基準である。モントリオールプロセスの基準2は33の指標に分かれているが,コンセッションでは,その内17指標についてのみ記録されている。3指標についてはコンセッションの管理計画にも入っていない。また,今回の調査では植林木の成長状況や非木質林産物についての調査が欠けているという問題もあった。今回の調査結果は,カンボジアにおける熱帯林の管理に有益であり,コンセッションの林業計画やモントリオールプロセスの評価基準や指標の改善に有益である。
著者
末 勝海 中尾 博美 陶山 正憲
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.235-269, 1973-03
被引用文献数
1

Serious damages occurred in the area of headwaters of Hitotsuse River in Miyazaki prefecture extending 10,000 ha., which areas are those including the Miyazaki District University Forest of Kyushu University caused by the typhoons No. 19 and No. 23 in 1971. Land slide damages as much as 400 places were recognized by means of aerial photographic interpretation. Total amount of the landslides was estimated about 200,000 m^3, countless forest roads were cut, and two check dams were destroyed. It is thought that most of these damages are due to the unprecedented storm rainfalls amounting to 1,300 mm and 700 mm in No. 19 and No 23 typhoons respectively, but it is recognized remarkable difference of damaging degrees in various districts and it is construed from the difference of natures in various soils. Damages are developed remarkably in the area of topographic features where gradients show the angle of 30~40 degrees. From our investigations on land slides occurred in cutting slope of forest road between Okochi and Ozaki, we recognized most of land slides tend to arize in newly earthworked zones and within 50 m from line of valley center. Considering roadway diagraph problem, failure percentage has been increased at the places such as the length of cutting slope of 4.77m, gradient of ground surface of 31.5 degree and cutting area of 13.54 m^2. Highest failure percentage was recognized in the conditions as follows: length of cutting slope 8.50 m, gradient of ground surface 42.5 degree, cutting area 32.5 m^2. In the Iwaya valley consisted of granite bed mostly, a land slide occurred in the scale such as inclines of 300 m, width of 50 m and soil amount of 50,000 m^3. Land slide flew down as debris flow having velocity of 4~11 m/sec and it caused considerable erosion at the place of steep slope of valley floor, but at gentle slopes contrary made the debris depositin. One check dam seemed to have been damaged gradually for several years, another was thought damaged by single attack of debris flow, and our two dimension calculation of stability indicated the area of cross section was insufficient for debris flow.
著者
今田 盛生
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.81-225, 1972-03
被引用文献数
7

本論文は,ミズナラ構造材林の造成を対象とした作業法に関する理論的研究および実証的研究を試みたものである。 まず,ミズナラの構造材林造成上考慮すべき樹性およびミズナラ構造用素材に要求される形質を検討して,それにもとづきミズナラ構造材林の育林技術上の基本的要件を明らかにした。それはつぎのとおりである。 1) 更新期において,密立更新樹を確保すること。 2) 稚幼期において,上層林冠を単層一斉状態に構成すること。 3) 壮令期以後において,上層間伐を採用することにより,肥大生長を促進すること。 4) 収穫期において,長伐期を採用することにより,高令・大径林を造成すること。 ついで,作業法に関する理論的研究を行ない,基本的要件とミズナラの構造材林の作業法に関連する特性にもとづき,各種の作業法について,主として育林技術上の観点から,ミズナラ構造材林造成に対する適用性を検討し,理論上の適用段階における基本的作業法は,伐採木自身からの落下種子を活用する皆伐天然下種更新法であることを明らかにした。その作業法の単位林分に対する適用の基本方式はつぎのとおりである。すなわち,150年生の伐期に達したミズナラ林を対象として,その林分の結実豊作年秋の種子落下後冬期間内に,ミズナラ上木を皆伐し,その伐採木(主伐木)自身からの落下種子を活用して,その皆伐跡地に翌春ただちにミズナラ稚苗を発生させて更新を完了する方法である。 さらに,作業法に関する実証的研究を,基礎研究と応用研究に分けて現実の林地で実行した。前者の基礎研究においては,ミズナラの作業法に関連する特性,すなわちミズナラの林分結実量・発芽・種子散布・上木庇陰下における稚苗の生育状態・稚苗の根系・稚幼期の密立林分における優勢木の生育状態・林分の生長推移を明らかにし,育林技術上の観点から考察したが,その結果はつぎのとおりである。 1) ミズナラの結実豊作年の伐期林分で生産される多量の種子を適切に活用すれば,天然下種更新法により,ミズナラの密立更新樹を確保することは可能である。 2) ミズナラの構造材林造成に,側方天然下種更新法・漸伐天然下種更新法・択伐天然下種更新法を適用することは困難である。 3) ミズナラを人工植栽する場合には,直根性の自然の根系(写真-3・1~3・4)をなるべくくずさないような方法を用いるべきである。 4) ミズナラは,密立一斉林分からでも優勢木が発生し,しかもその樹高生長力は大きく低下しないという樹陛をもっているから,密立単層一斉林を構成することは,育林技術上支障を生じる危険性は小さい。 5) ミズナラの構造材林造成を対象とした場合,更新当初における必要最少限の稚苗発生密度はha当り10万本,また更新完了後5年目における必要最少限の稚樹成立密度はha当り3万本であると推定される。 6) 上層間伐は,主伐候補木の平均枝下高が7mに達する35年生林分から開始すべきである。 7) 主伐期の単位林分における林分構成および収穫材の目標は表-3・21のとおりである。 後者の応用研究においては,基本的作業法を単位林分に適用する場合に必要な育林手段は,施行順にあげると,下種地拵・補播・種子覆土・更新伐・枝条整理・補植・稚樹刈出・除伐・枝打・間伐であることを明らかにし,それらの育林手段のそれぞれについて,補播および補植を除いて,現実の林地で試験した。その試験結果にもとついて,それらの個々の育林手段の体系化を試み,基本的作業法の単位林分に対する適用方法の基準は表-4・1に示すとおりであることを明らかにした。 以上の研究結果を総括して,ミズナラの構造材林造成を対象とした作業法は,その適用林の単位林分に対して,150年伐期により,表-3・21に示した林分構成および収穫材を目標として,表-4・1に示した育林技術を適用する生産方式であることを明らかにした。さらに,この作業法の特性にもとついて,総括的考察を試みた結果,この基本的作業法が適用された全林を組織化する場合には,単位林分の面積をなるべく小さくし,しかもその単位林分を逐次隣接させず,林道網整備を先行させて分散させるべきであるとともに,この作業法は大規模林業経営体に適用される可能性が大きいものと認められた。