- 著者
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荻野 慎也
山中 大学
深尾 昌一郎
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.2, pp.407-413, 1995-06-15
- 被引用文献数
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J-COARE白鳳九航海のレーウィンゾンデ観測(1992年11月1日〜12月4日)より得られた温度・風速データをもとに、低緯度帯(13.78°S〜24.50゜N)の下部成層圏(14〜22km)における重力波活動度の南北変化を調べた。高度14〜22kmのデータを用いて鉛直波数スペクトル解析を行ない、全期間の平均をとると、卓越鉛直波長は温度・東西風については4km、南北風については2.7kmであった。高度プロファイルおよびホドグラフ解析結果をみると、赤道をはさんで南北約10゜の範囲では、鉛直波長が4km程度の比較的振幅の大きな(5〜10m/s)波動構造が、東西風にはしばしば認められるが南北風にはほとんど認められないことから、4kmの成分には主にケルビン波が、2.7kmの成分には主に重力波が寄与しているものと考えられる。鉛直波長4.0km,2.7m,2.0mの各成分について、パワースペクトル密度を緯度の関数として整理し、中緯度帯と較べると低緯度域の方が重力波活動度は大きいという結果を得た。重力波の振幅は波の周期や背景のブラントバイサラ振動数に関係すると考えられるが、今回得られた南北分布はこれらのパラメタだけでは説明できず、赤道付近で活発な積雲対流が重力波の励起と密接に関わっていることを示唆している。