著者
植田 宏昭 安成 哲三
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-12, 1998-02-25
被引用文献数
12

本研究ではベンガル湾及び南シナ海上の東南アジアモンスーン(SEAM)の開始のメカニズムを, チベット高原とその周囲の海洋との温度コントラストの視点から調べた。循環場の解析にはECMWFによる5日平均客観解析データ(1980-1989年), 対流活動の指標としてはGMSの5日平均等価黒体温度(TBB)データ(1980-1994年)を用いた。東南アジアモンスーンのいち早い開始は, 第28半旬(5月16-20日)に下層のモンスーン西風気流の加速を伴って見られ, その後6月の上旬に2回目のモンスーン強化が生じている。春から夏にかけてのチベット高原上では, 200-500 hPaの気層の温度上昇が約15日間隔で上昇している。特に5月中旬のチベット高原上の温度上昇は, SEAMの開始と一致している点が重要である。すなわちチベット高原とその周囲の海洋との温度差異は, 下層のモンスーン気流の加速と東方への拡大を引き起こし, 結果として南シナ海モンスーン(SCSM)を含むSEAMの急激な開始をもたらす。この関係は, (10゜-20゜N, 80゜-120゜E)での下層の風と200-500 hPaの層厚との年々変動の相関解析によっても確認された。中緯度への影響としては, SCSMの開始による低気圧性渦度と熱源により, 定常ロスビー波が南シナ海上で励起され, 更に北東方向に伝播している。この波の下流の日本付近は正の高度場偏差が現われ, 川村と田(1992)が示した5月中旬の日本の晴天の特異日と一致している。

言及状況

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こんな論文どうですか? ベンガル湾及び南シナ海上の夏季モンスーンの早期開始におけるチベット高原の温度上昇の役割(植田 宏昭ほか),1998 http://id.CiNii.jp/HkMcL

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