- 著者
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中川原 捷洋
大村 武
岩田 伸夫
- 出版者
- 日本育種学会
- 雑誌
- 育種學雜誌 (ISSN:05363683)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.6, pp.305-312, 1972-12-31
- 被引用文献数
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5
日本型の連鎖分析用標識系統と外国イネとの交雑によって認められる形質分離のゆがみ現象のうち、第11連鎖群の遺伝子に関与する形質分離のゆがみは、花粉の競争力を支配する遺伝子(配偶体遺伝子)と標識遺伝子とが連鎖するために生じる。ここでは、標識遺伝子、bc(鎌不要)、dl(たれば)およびch(黄緑葉)と配偶体遺伝子(ga_2、ga_3)との連鎖関係を明らかにした。組換価はF_2の形質分離からは推定できないので、F_3の調査から各F_2個体の遺伝子型を推定することによって算出した。種々の交雑組合せを通じて、ga_2はdlの近傍に座位し、ga_3はdlよりもむしろbcにかなり近い距離に座位している。しかし、片親に用いた外国品種の違いによってその位置はかなり変異しており、しかも上記4遺伝子相互の組換価は日本イネ標識系統間交雑によって求められる通常の組換価よりもいくらか小さく見積られた。つぎに、算出した組換価を用いて、ga花粉のga^+花粉に対する授精率を算出したところ、正常花粉(ga^+)に対してga花粉は1/10以下しか授精に関与していない場合が多く、したがってgaはかなり強力な選択授精の要因であることが明らかとなった。このことは、栽培イネが分化した結果、ga遺伝子が生殖的隔離現象の重要な因子となっていることを示している。以上の結果は、雑種不稔性に加えて、配偶体遺伝子の存在によっても交雑によって形質の自由な組換が阻害されているために、外国イネがもっている望ましい形質を日本イネに導入する際に大きな障害となっていることを示すものである。