著者
柴田 勝
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.77-90, 1976-06-01

アカマツ,クロマツおよびその種間交雑種であるアカクロマツの分類指標には針葉の解剖学的特性が有効とされているが,それらの遺伝様式は像どんど解明されぬまま使用されてきた。これは材料が天然生であったことに起因するが,これでは分類の正確性と客鰯性に欠ける感がある。そこで材料,分類指標に工夫をこらして新しい分類方法に主成分分析を応用した。ここではダイアレル交雑種を材料にその針葉における16の解剖学・物理学的特性値を変数として使用した。n=30,p=16の相関行列から固有値,固有ベクトル,寄与率および因子負荷最を求めた結果,第3主成分までで寄与率83%を示し情報の大半が説明された。すなわち,第1主成分(2ユ)はアカ河ツ・クロマソ判定因子,第2主成分(Z2)は雑種性判定因子および第3主成分は伸張性に関する因子と考えられた。特性値の分類は因子負荷量を使いZ1.Z2について行なったが,伸び率を除く15特性値の寄与率はきわめて高くZ1,Z2でかたりの情報を提供した。特性値は明らかに4つの因子に分類され特に樹脂道型について新知見を得た。すなわち従来アカマツ型とされていた"外位"をII型、III型およびVI型の3タイプに細分することにより,n型は中間・クロマツ寄り雑種因子を,III型ですらアカマツ寄り雑種因子を示し,VI型のみがアカマツ因子であることがわかった。主成分スコアによる原種および雑種の散布図は特異たブーメラン形分布を示し21軸上では対称的た両親のほぼ中問に位置するアカクロマツが,Z2軸上では最高の値を示してその雑種性の高いことを反映した。特に注目すべき知見は針葉のある特性に母本効果が認められた点であり,針葉の内分泌器管に細胞質遺伝のあることが示され分類学,遺伝学上興味深い問題を提供Lた。以上のことより主成分分析は林木の雑種集団および系統・品種の分類学・遺伝学的研究にきわめて有効であることが示唆された。

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こんな論文どうですか? 針葉の主成分分析による雑種アカクロマツ(Pinus densi-thunbergii UYEKI)の分類,1976 http://ci.nii.ac.jp/naid/110001812331

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