- 著者
-
滝田 正
- 出版者
- 日本育種学会
- 雑誌
- 育種學雜誌 (ISSN:05363683)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.2, pp.171-176, 1982-06-01
- 被引用文献数
-
2
自然日長が,作期移動による我が国の水稲品種の出穂期変動に及ぼす影響を明らかにする目的で2つの実験を行なった。早晩性を異にする感光性の高い5品種(ニホンマサリ,峰光,日本晴,中生新千本,黄金錦)に短日処理をした。この結果,7月20日頃に相当する日長(薄明と薄暮の各15分を加えて14時間45分)または8月10日頃に相当する日長(同じく14時間15分)は,夏至(同じく15時間5分)期の自然日長に比較し,出穂を促進させた。つぎに25℃の定温にした人工気象箱を用い,2月から9月まで播種期を移動させて,早晩生を異にする別の5品種(トヨニシキ,喜峰,ニホンマサリ,日本晴,中生新千本)への自然日長の影響を調べた。日長への感応度を調べるために花芽分化期(出穂30日前)における単位日長時間当りの出穂遅延度を調べた。この値の最大となる日長は,通常の栽培で花芽分化期と推定される7月1日頃から8月1日頃の日長であった。また到穂日数は,花芽分化期の日長が4月上旬以前の日長である場合は極端に短縮し,4月下旬以後の日長である場合は通常の栽培条件下の到穂日数に近かった。4月中旬は,短日から長日への移行点に当っており,この時期に花芽分化に入った感光性の高い品種は極端な出穂不揃いを示した。この理由として,短日効果が不十分なため同一株内に花芽分化した茎と花芽分化には至らなかった茎が生じたためと考察した。また4月に播種し屋外で生育させた場合は,長日条件の他に生育初期の低温により出穂が遅延した。 以上の結果から作期移動による出穂期変動は,夏至後の日長の変化によって大きく影響されると結論した。