著者
岡本 正弘 平林 秀介 梶 亮太 福岡 律子 八木 忠之 西山 壽 西村 実 深浦 壮一 山下 浩 滝田 正 斉藤 薫
出版者
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター
雑誌
九州沖縄農業研究センター報告 (ISSN:13469177)
巻号頁・発行日
no.39, pp.127-141, 2001-12
被引用文献数
3

「柔小町」は暖地の普通期作に適する初めての低アミロースの水稲品種であり、1999年3月17日に第7084号として品種登録、2000年8月25日に水稲農林364号として命名登録された。「柔小町」は、中生の晩で多収の「ニシホマレ」を母、dull遺伝子を持つ低アミロース系統「探系2021」を父とした交配組合せから系統育種法によって育成された。熟期は育成地では「ニシホマレ」とほぼ同じ中生の晩に属し、粳種である。稈長は中、草型は中間型、耐倒伏性は中、止葉の直立程度はやや立で草姿熟色は良好である。いもち病抵抗性遺伝子、Piaをもつと推定され、葉いもち圃場抵抗性はやや弱、穂いもち圃場抵抗性は中である。白葉枯病抵抗性は金南風群に属し、圃場抵抗性はやや弱である。収量性は「ニシホマレ」と同程度で多収である。玄米の粒大はやや小で、外観品質は中の中である。登熟期間の気温が平年並みの場合には米はほとんど白濁しないが、高温年では低アミロース米特有の白濁を生じる。アミロース含有率は平均すると12%程度で低アミロース品種としては高い。タンパク質含有率は中である。低アミロース米のため、炊飯米の粘りが強く、食味の総合評価は「ヒノヒカリ」並の上の中である。また、他品種との混米による食味向上効果が大きく、ブレンド適性は良好である。暖地の平坦地から中山間地および温暖地西部の平坦地に適応する。
著者
滝田 正
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.171-176, 1982-06-01
被引用文献数
2

自然日長が,作期移動による我が国の水稲品種の出穂期変動に及ぼす影響を明らかにする目的で2つの実験を行なった。早晩性を異にする感光性の高い5品種(ニホンマサリ,峰光,日本晴,中生新千本,黄金錦)に短日処理をした。この結果,7月20日頃に相当する日長(薄明と薄暮の各15分を加えて14時間45分)または8月10日頃に相当する日長(同じく14時間15分)は,夏至(同じく15時間5分)期の自然日長に比較し,出穂を促進させた。つぎに25℃の定温にした人工気象箱を用い,2月から9月まで播種期を移動させて,早晩生を異にする別の5品種(トヨニシキ,喜峰,ニホンマサリ,日本晴,中生新千本)への自然日長の影響を調べた。日長への感応度を調べるために花芽分化期(出穂30日前)における単位日長時間当りの出穂遅延度を調べた。この値の最大となる日長は,通常の栽培で花芽分化期と推定される7月1日頃から8月1日頃の日長であった。また到穂日数は,花芽分化期の日長が4月上旬以前の日長である場合は極端に短縮し,4月下旬以後の日長である場合は通常の栽培条件下の到穂日数に近かった。4月中旬は,短日から長日への移行点に当っており,この時期に花芽分化に入った感光性の高い品種は極端な出穂不揃いを示した。この理由として,短日効果が不十分なため同一株内に花芽分化した茎と花芽分化には至らなかった茎が生じたためと考察した。また4月に播種し屋外で生育させた場合は,長日条件の他に生育初期の低温により出穂が遅延した。 以上の結果から作期移動による出穂期変動は,夏至後の日長の変化によって大きく影響されると結論した。
著者
滝田 正
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.57-61, 1984-03-01
被引用文献数
1

作期移動による日本水稲品種の出穂早晩性の変動に及ぼす自然温度と日長の影響を,早晩性の異なる6品種について4作期で調べた。北緯36度にあたる筑波の8月1日頃に相当する薄明・薄暮の各15分を含む14.5時間日長区を設定した。自然温度の影響は,14.5時間日長区内における到穂日数の作期間差異とし,自然日長の影響は,同一播種期における自然日長区と14.5時間日長区の到穂日数の差として表わした。5月26日播の普通期栽培を基準とした場合,4月16日播の早期栽培では,全品種とも8月1日以前の長日よりも5〜6月の低温の影響により到穂日数が長くなった。一方6月15日播の晩期栽培では,感光性の高い品種群に。おいて,7〜8月の高温よりも8月1日以後の短日により到穂日数が短縮した。また個々の品種間変動については,感光性が低い早生群では,レイメイは,ホウネンワセよりも感温性カミ小さいために,低温期間の長い早期栽培ではホウネンワセよりも早く出穂し,低温期間の短かい晩期栽培では遅く出穂した。一方,感光性が高い晩生群では,日本晴はワカゴマよりも感光性がわずかに高いために,長日条件の早期栽培ではワカゴマよりも遅く出穂し,短日条件の晩期栽培では早く出穂した。