- 著者
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寺岸 明彦
神原 嘉男
小野 浩
- 出版者
- 園芸学会
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.5, pp.715-720, 1998-09-15
- 参考文献数
- 12
- 被引用文献数
-
4
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イチジク(品種'桝井ドーフィン')の穂木を12月1日に挿し木し, 加温したガラス室内またはファイトトロン内で異なる光強度下において45日間育苗した.1月15日に底面吸液と潅水チューブによる給液を併用した非循環閉鎖型養液栽培システムに定植した.挿し木1年目から果実生産を行う方法を検討するため, 苗質が着果, 生長ならびに果実品質におよぼす影響を調査した.育苗期間中にファイトトロン内で8.5klxの照明による14時間日長処理を行うことにより, 定植時における葉のクロロフィル含量が増加し葉色値が高くなった.定植時において第3葉の葉色値が25以上の株では5節目までにおける着果数が増加した.しかし, 17klxの照明による処理を行っても葉色値および着果数は8.5klx照明区と差はなかった.ガラス室内で日没後に0.2klxの照明による14時間日長処理を行っても葉色値および着果数は無処理区と同程度であった.収穫は5月27日から始まり, 7月10日までに全着果数の約85%の果実が収穫できた.ファイトトロン内で育苗した区はガラス室内で育苗した区に比較して定植後の栄養生長が促進され, 6月上旬までは果実肥大も促進されたが糖度はやや低かった.両区とも6月中∿下旬の梅雨期間中は光合成速度が低下した.しかし, 蒸散速度と吸液量は低下せず, 果実肥大にも影響はなく, 糖度は著しく低下した.7月には, フアイトトロン内で育苗した区の光合成速度はガラス室内で育苗した区よりも高かったが, 糖度は逆に低かった.