著者
若松 昭子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.143-158, 2001-04-30

ピアス・バトラーがニューペリー図書館の印刷史コレクション構築の中で最も力を注いだのはインクナブラの収集である。本稿では, 当該コレクションを通してバトラーが提示しようとした観点を明らかにするために, ニューペリー図書館のインクナプラ目録およびインクナブラ展示会目録の分析を通してコレクションの内容を検討した。コレクションにはインクナプラに用いられた活字体の変遷や, 書物が写本から標題紙等の機能を備えた近代的な形態へと発展する様子が示されていた。即ち, バトラーは当時発展期にあった分析書誌学の研究成果を採用することにより, 印刷術の歴史地理的な伝播過程, および書物の形成過程という二つの歴史を具現化しようとしていたことが見て取れた。さらに, インクナブラの時代を学問の発展期として位置づけようとしていたこともうかがえた。

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