著者
桃塚 薫
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:13440896)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.35-47, 2003-03

今日の組織において,情報技術の利用に積極的態度を持つ人々は,絶えず自己のアイデンティティを変容させながら,自己の正統化を図ることで,自己を取り巻く状況(組織,社会など)を変革しようとする特徴がある。本研究では,3つの鍵となる概念:(1)新技術・新知識の利用に積極的であり,社会の既存のヒエラルキーに対抗的な「オルト・エリート」,(2)自己と他者の関係性を絶えず組替えながら,自己を動的に形成する「アイデンティフィケーション」,(3)自己を他者より卓越させる進行中のメカニズムである「正統化」からなるフレームワークを用いて,伝統的な古書店の協同組合において,オルト・エリートが情報技術を利用しながら組織を変化させていくダイナミズムについて検討した。同組合のオルト・エリートは,情報化の抵抗が強い組織のなかで,情報技術を導入した。その過程で,同組合のオルト・エリートは,組織内部において,また組織内部と外部との間で,自己と他者の関係を動的に組替えていることが観察された。更に,文化的,経済的,マネジメント的側面で,オルト・エリートが自己を正統化していこうとする動きも観察された。これらの動きが合わさって,自己と他者の関係性がダイナミックに変化することで,全体としての組織も変化していくことが確認された。

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オルト・エリートと組織変化のダイナミズムについて--古書籍商業協同組合の情報化を中心にして https://t.co/SyMlboeXdD

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