著者
森 一夫
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.p17-25, 1976-03
被引用文献数
1

物質観の発達をとらえるにあたって,まず幼児の物質観は素朴実在論的物質観であると措定する。これは外界に実在する物質を知覚されるとおりのままの固まり(mass)としてみて,物質の内的構造の把握にまでは至らないから,(1)物質の表面的属性だけで判断するために重さの概念は見かけの大きさに従属していて,したがって重量と体積とは概念的に未分化である。(2)自らの意識に反映されたとおりのままの物質としてとらえているため,欲求の度合に応じて物質の大きさの知覚に差異が生じる。このような基本的仮説に基づいて実験を行ったところ,次のような知見が得られた。1.3才児と4才児では大きい球を重いと判断する傾向が認められる。つまり幼児に関する限り,視覚が介在すると反Charpentier効率ともいうべき傾向が認あられる。これは幼児の場合,重量が見かけの体積と依存しているため,Charpentier効果に優先してこれと逆の結果が現われたものであろうと考えられる。

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