著者
藤井 恭子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.146-155, 2001-06-30
被引用文献数
3

本研究では, 青年期の重要な友人との関係における心理的距離をめぐる葛藤について検討する。具体的には, 青年が友人との心理的距離をめぐり, 「近づきたいけれども近づきすぎたくない」, 「離れたいけれども離れすぎたくない」というように, 「適度さ」を模索して生じる葛藤である。本研究ではこの葛藤を, 「山アラシ・ジレンマ」として捉え, (1)青年期の友人関係における「山アラシ・ジレンマ」を抽出する, (2)「山アラシ・ジレンマ」に対する心理的反応の仕方を明らかにする, (3)「山アラシ・ジレンマ」とそれに対する心理的反応の仕方の関係について, 心理的距離の程度から明らかにする, ことを目的として研究を行った。その結果, 近づくことに対するジレンマ, 離れることに対するジレンマにおいて, 心理的要因がそれぞれ2つずつ抽出された。それらは, 対自的要因によるジレンマと, 対他的要因によるジレンマであると整理された。また, 生じた「山アラシ・ジレンマ」に対して, 「萎縮」, 「しがみつき」, 「見切り」という3つの心理的反応があることが明らかとなった。さらに, 対自的要因による「山アラシ・ジレンマ」ほど, 心理的反応に結びつきやすく, その傾向は相手との心理的距離を遠く認知しているほど強まることが明らかとなった。

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