- 著者
-
柳原 良江
- 出版者
- 日本生命倫理学会
- 雑誌
- 生命倫理 (ISSN:13434063)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.48-55, 2001
- 参考文献数
- 14
男性中心主義は、女性の生殖能力の保存を成立基盤としており、長い間、女性のセクシュアリティの管理を行うことで、その維持を図ってきた。しかし医学や科学技術の発展により、生存様式が変化しつつある現在、過剰に女性の生殖機能を重視する男性中心主義は、もはや有効性を失ったといえる。性交は二者間で身体摩擦を与えあう現象と捉えられるが、その行為を成立させる必要条件と、行為の間に各自が受け取る感覚によって、当事者は「自己」に影響を受ける。女性においては「自己」への影響が、男性中心主義の文脈で解釈される事により、男性中心主義的社会システムの維持に利用されてきたと考えられる。また、この過程は、生活において避けられないものとして隠蔽され、女性の人権侵害を行っている。しかしそれは、性行為が男性中心主義を維持し続けるための巧妙な装置である状況を示していると言えよう。