- 著者
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盛永 審一郎
- 出版者
- 日本生命倫理学会
- 雑誌
- 生命倫理 (ISSN:13434063)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.135-142, 2001-09-17
着床前診断とは、受精卵を子宮に着床させる以前にその受精卵の遺伝子を解析する診断のことであり、IVF技術と遺伝子解析技術とが結びついたものである。イギリス、アメリカをはじめ、多くの国で着床前診断の臨床応用が始まり、すでに世界中で4百組以上の夫婦に実施され、百例以上の子供が誕生している。ドイツにおいては着床前診断は「胚保護法」により禁止されている。そこで、ドイツ医師会は2000年2月24日に「着床前診断」に関する公開議論を企てた。ドイツにおけるPGDに反対する議論には4つの視座がある。すなわち、「人間の尊厳」、「人権」、「優生学」、「障害者差別」という視座である。これらの視座のうち、日本の議論に欠けているのは「人間の尊厳」という視座である。このレポートにおいては、ドイツの議論をたどりながら、この視座に焦点をあてて、それが意味するものが何であるかを考えた。