- 著者
-
宇津呂 武仁
松本 裕治
長尾 眞
- 出版者
- 一般社団法人情報処理学会
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.5, pp.913-924, 1993-05-15
- 被引用文献数
-
24
自然言語処理のための大規模な意味辞書を構築するためには、人間のための辞書や大規模コーパスに含まれる自然言語の文を解析して、そこから意昧辞書を構築する技術を確立することが重要となる。計算機で知識獲得を行う場合、全自動で知識が獲得されることが望ましいが、現在利用可能な情報が貧弱であるため、有用な知識を獲得するためには何らかの人間の介入が必要である。しかし、最終的に得られる結果が人間の主観的な判断の影響を受けないように、人間の介入は最小限に抑えたい。我々は、英語と日本語のように統語構造および語彙が異なる二言語間の翻訳例を構文解析して、その結果を二言語間で比較するというアプローチによって語彙的知識の獲樗を行っている。そこでは、両言語の解析結果を比較することによって統語的および意味的曖昧性の両方が解消するため、単言語だけのアプローチに比ぺると人間の介入を大幅に抑えて語彙的知識を獲得できる。本論文では、二言語対訳コーパスから日本語の動詞の表層格フレームを獲得する手法について述べる。我々の手法では、システムと人間との相互作用は、動詞の複数の意昧を類別する部分だけに許される。そこでは、システムが動詞の複数の意昧を類別する手がかりをヒューリスティックスによって発見し、その妥当性を人間が判定するという形で相互作用が行われる。その際には、対訳例の英語の情報が有カな手がかりとなる。