著者
立木 秀樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.954-962, 1993-05-15

最近、Common Lispにオブジェクト指向の機能を付け加えた言語CLOSが広まりつつある。CLOSでは、総称関数を用いて、オブジェクト指向のメッセージ送信を一種の関数呼び出しとして実現している。しかし、CLOSの総称関数は、Lispの関数とは別物であり、Lispの基礎に存在する関数型言語の計算機構を総称関数に拡張しているわけではない。そのためには、λ計算がLispの理論的墓礎であるのと同様、総称関数を関数とする形式計算を考える必要がある、本論文では、そのような形式計算として、レコードとマージ・オペレータを型つきλ計算に付け加えた計算λmを提案する。λmは、総称関数の動作を関数型言語の枠組でモデル化している。λmのレコードはCLOSのオブジェクトに、関数は総称関数に対応する。レコードのマージはレコードの結合に、関数のマージはCLOSのメソッド融合に対応している。λmは、簡約による型の保存等形式計算としてよい性質を持ち、表示的意昧がドメイン上で構成可能である。その際、マージは上限操作として意味が付けられる。

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