- 著者
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寺田 実
- 出版者
- 一般社団法人情報処理学会
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.7, pp.1610-1617, 1993-07-15
- 被引用文献数
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2
ユーザとの対話を直接担当するプログラムのように多様な処理を長時間にわたり行う場合、利用されなくなった情報(関数定義など)を捨てることが重要になってくる。しかし通常のごみ集め(gC)では、到達可能なデータ(すなわち、少しでも再利用の可能性のあるもの)は回収できない。ここで注目したのが、いくつかのLispにあるWeak Pointer(wp)というデータ型である。wpは単独では参照先をgcから保護しないという特徴を特つ。この機能を拡張し記憶管理のために利用しようというのが本研究である。拡張点は3点ある:捨てた後のポインタの値の個別指定、段階的なデータ保持能カ、減衰によるデータ解放である。この拡張により、データの重要性や利用頻度に対応した保持期間などを設定できる、また、捨てた後での再ロードも容易に実現できるようになる。本論文では、拡張Wpの実現方式について、gCアルゴリズムの変更も含めて考察する。さらに拡張wpをUnix上でのLisp処理系に実装し、アプリケーションを作成して効果やオーバヘッドについて評価を行い、実用性を立証する。