著者
山根 信二 村山 優子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1975-1982, 2001-08-15

1990年代の暗号技術規制論は,キーエスクローシステムを中心とする枠組みで論じられた.だが当時の議論はもはや有効ではない.今後の暗号技術の進路策定について議論する際には,1990年代の議論とは異なる枠組みが必要である.現在,議論のための枠組みの形成が急がれている新たな暗号技術問題として,暗号解析をめぐる係争があげられる.暗号技術の開発評価において暗号解析は重要な役割を担ってきたが,暗号解析の公表やその再配布については議論が分かれている.日本では,1999年から著作権の「技術的保護手段」の回避を行うプログラムを公表しようとする者は処罰されることになった.本論文では,この法制による暗号解析への影響を,2000年にアメリカで起こったDVDプロテクト破り訴訟を参考にしながら検証する.コピープロテクトに対する暗号解析の公表を法的に規制することは,コンピュータ専門家がかかえる技術的および法的リスクを増大させる.また,その影響はコピープロテクト技術のみにとどまらず,暗号技術の開発評価全般に及ぶ可能性がある.このような問題に対処するためには,暗号解析を含む暗号技術開発の進路策定を決める枠組みを刷新することが必要である.最後に,今後の専門家に要求される新たな役割についても検討を行う.The regulation of cryptography in 1990s had been formed under the ``framework of key escrow system,''such as the limitation of thekey-length or the lawful access field.While the 1990s' framework is not effective anymore,a new framework of regulation is evolving worldwide.After 1999, the copyright act in Japan prohibits ``the circumvention of atechnological copyright protection measure.''This act can make some work including the reverse engineering and cryptoanalysis illegal.The same problem has examined in the U.S. on the DeCSS DVD decoder lawsuit in 2000. The outlawing of the circumvention of the copyright protectiontechnology is not limited only the cryptanalysis, and will effect to the further social problem. The new role of computer professionals arerequired to deal with this new kind of risks. Finally this paper examines the computer professional's activities for the comming alternative framework as well.

言及状況

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@glgcy 国際条約の関係で、同時期の日本でもコピープロテクト外しが違法化されました。しかし日本では議会が例外条項をつけず原案どおりに実施されたため、公的目的のためのコピープロテクト外しという概念がないのです http://t.co/jYr4ETzoJs
10年前は日本の強行立法が海外に輸出される危機があったが,いま日本の音楽産業を見習おうとする国はいないのが不幸中の幸い #CiNii 暗号技術を位置づける社会的枠組みについての考察(<特集>21世紀のコンピュータセキュリティ技術) http://t.co/5JrPMKe4
RT @shinjiyamane : 秘密交渉である。知財戦略会議ではマジコン対策とACTA交渉を並べているので、個人的にはDMCAの第二ラウンドという印象がある。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110002725953
RT @shinjiyamane : 秘密交渉である。知財戦略会議ではマジコン対策とACTA交渉を並べているので、個人的にはDMCAの第二ラウンドという印象がある。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110002725953
秘密交渉である。知財戦略会議ではマジコン対策とACTA交渉を並べているので、個人的にはDMCAの第二ラウンドという印象がある。 http://ci.nii.ac.jp/naid/110002725953

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