- 著者
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加藤 寿郎
山口 昭
- 出版者
- 日本植物病理学会
- 雑誌
- 日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.2, pp.117-123, 1971-03-30
オオムギ斑葉モザイクウイルス(BSMV)に感染したオオムギ(品種・横綱)の粗汁液(15,000×g, 30分上清)をポリアクリルアミドゲルを支持体とする電気泳動にかけると, 健全対照には見られない2群のバンド(SA 1, SA 2)が得られた。これらのバンドに含まれる物質は, 105,000×gの遠心によっても沈でんしない。また, これらの物質は, 葉緑体中のfraction Iたんぱくよりも易動度が小さく, SA 1, SA 2ともBSMV抗血清と反応する。BSMVたんぱくの電気泳動によって, SA 1およびSA 2に相当するバンドが得られる。SA 1をとり出して再び電気泳動するとSA 2が分離してくる。したがって, ウイルス感染によって生じたこれらの可溶性抗原は, ウイルスたんぱくが種々の程度に凝集したものと考えられる。感染が進むとfraction Iたんぱくは減少する。接種した第1葉では, えそ斑点が現われる接種後3日めに可溶性抗原が検出されるが, 感染が進むにつれて減少し, 接種後8日には認められなくなる。これに反して, 第2葉では, 葉基部にmosaicが見えはじめる接種後4 ,5日めにはじめて可溶性抗原およびウイルスが検出され, その後感染の進行にともなって両者とも増加する。ウイルス合成における可溶性抗原の意義については結論が得られなかったが, 第1葉と第2葉での可溶性抗原の消長の違いは, 両者での病徴の型およびウイルス含量の差と関係があるものと思われる。