- 著者
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中田 考
- 出版者
- 日本宗教学会
- 雑誌
- 宗教研究 (ISSN:03873293)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.2, pp.243-267, 2004
西欧の宗教学は「神学」を出自とする。他方、イスラーム世界にはそもそも「神学」は存在せず、イスラーム学とは「宗教学」であった。しかるに西欧の宗教学はこのイスラームの「宗教学」を包摂する道を選ばず、かえってイスラームに「イスラーム研究(東洋学、地域研究)」という別の専攻を割り当て、イスラームを視野に収めることなくその「宗教」概念を構築してきた。こうして形成された西欧の宗教学もイスラーム研究も価値中立的な客観的記述を標榜するが、実はイスラームの真理性要求の拒否を無自覚な規範的前提としている。本稿は、言語の規範性の本質にまで遡り、イスラーム研究における規範主義的アプローチの必要/必然性を基礎付け、「イスラーム」の辞書的意味から出発して、「真のイスラーム」と「偽のイスラーム」の識別をこととし、伝統イスラーム学との接合、イスラーム世界との対話を可能ならしめる新しいイスラーム研究のパラダイムを提示する。