著者
近藤 光博
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.397-421, 2004-09-30

本稿の主題は、現代インドの日常生活を強く支配する対「ムスリム」偏見である。とくに「ムスリム」を「余所者」「侵略者」、さらには「狂信者」「分離主義者」とみなす二組のステレオタイプを取り出し、それぞれについてその歴史的背景を整理する。そこで明らかにされるのは、右のような強固な偏見は単なる空想や虚偽ではなく、一定の事実性にもとづく共通感覚であること、しかもその偏見の強固さのゆえに偏見を強化する言動が再生産されるという循環関係がインド社会に構造化されていることである。現代インドのコミュナリズムの基底をそのようなものとして提示したうえで、本稿はさらに、この特殊インド的な問題が宗教研究の諸理論と深く関連していることを指摘する。具体的には、宗教分類学と宗教概念の関係、習合概念の限界、ユダヤ=キリスト教=イスラーム的な世界観・文明原理の特殊性、宗教概念と共同体概念の関係などの諸問題が、コミュナリズム論にとって有する意義の大きさを指摘する。

言及状況

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私自身、「ディーン」概念の重要性にちょっとだけ言及したことはあって、ありがたいことに 澤井さんもその論文を参照してくださっています(拝復  ↓ 近藤光博「現代インドの対「ムスリム」偏見 : コミュナリズム論から宗教研究の理論的再検討へ」(2004年)https://t.co/XFwjYQKrtB

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