- 著者
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湯川 典子
恩田 裕一
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.3, pp.224-231, 1995-05-01
- 被引用文献数
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33
下層植生が失われた林地における浸透能の低下の現状と原因を明らかにするために、三重県の鈴鹿山地の下層植生の被覆状態がさまざまなヒノキ林において、土壌の浸透能と土壌物理性の測定を行った。浸透能測定には、雨滴衝撃の少ない散水型浸透計を使用した。測定から、下層植生が失われた林分は、下層植生の繁茂する林分と比較して浸透能が低く、粗孔隙率が高いという結果を得た。また、林床の裸地化したヒノキ林では、土壌硬度が高く浸透能が低い特徴をもった乾燥した皮膜が観察された。この皮膜は、雨滴衝撃による団粒構造の破壊によってできるクラストであると考えられた。以上のことから、下層植生の失われた林地においては、粗孔隙率よりクラストの有無が浸透能に影響を与えることが推察された。