著者
恩田 裕一 湯川 典子
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.399-407, 1995-09-01
被引用文献数
22

われわれは第1報において,ヒノキ林において下層植生の失われたところではクラストがあり,浸透能が低いことを示した。そこで,室内実験において,下層植生のクラスト形成抑止効果に関する実験を試みた。実験材料は現場A層(鈴鹿山地の花崗岩土壌および古生層土壌)を4mmの篩でふるったものを用い,28.5cm×17.0cm×14.0cmの容器にさまざまな植生を植えて降雨実験を行った。その結果,花崗岩土壌では,被度と浸透能の相関が高いことがわかった。一方, 古生層土壌では, 被度と浸透能の相関は低いが,それぞれの植生の葉面積と浸透能の関係には高い相関が認められた。中古生層土壌の方が団粒百分率が大きく,クラストが形成されやすいと考えられることから,雨滴エネルギーを抑止しクラスト形成を妨げる効果は,被度により支配されるが,葉の面積が大きいほど効果的であることがわかった。
著者
湯川 典子 恩田 裕一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.224-231, 1995-05-01
被引用文献数
33

下層植生が失われた林地における浸透能の低下の現状と原因を明らかにするために、三重県の鈴鹿山地の下層植生の被覆状態がさまざまなヒノキ林において、土壌の浸透能と土壌物理性の測定を行った。浸透能測定には、雨滴衝撃の少ない散水型浸透計を使用した。測定から、下層植生が失われた林分は、下層植生の繁茂する林分と比較して浸透能が低く、粗孔隙率が高いという結果を得た。また、林床の裸地化したヒノキ林では、土壌硬度が高く浸透能が低い特徴をもった乾燥した皮膜が観察された。この皮膜は、雨滴衝撃による団粒構造の破壊によってできるクラストであると考えられた。以上のことから、下層植生の失われた林地においては、粗孔隙率よりクラストの有無が浸透能に影響を与えることが推察された。