- 著者
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酒井 昭
石川 雅也
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.1, pp.15-20, 1979-01-25
亜高山または亜寒帯性針葉樹の冬芽は-30〜-40℃の温度範囲で枝条原基のみが凍死することが知られている。このことは枝条原基がこの温度範囲まで過冷却後細胞内凍結をおこして死ぬ可能性を示している。このことを確かめるために, 針葉樹の冬の芽の示差熱分析を行なった。亜高山または亜寒帯性モミ属の冬芽は-5〜-8℃で外部芽鱗が凍結したのち, 枝条原基は約-30℃まで過冷却した。また, 芽から枝条原基, その直下にある厚角組織およびそれらの外側をとりまくうすい内部芽鱗をとり出し熱分析したところ, 枝条原基は約-30℃まで過冷却した。しかし, 開舒20日前の春の芽の枝条原基は-15℃までも過冷却しなかった。暖帯性モミ(A.firma)の冬芽の枝条原基は, その凍死温度である-20〜-22℃まで過冷却した。しかし, トウヒ属の冬芽では-5〜-8℃での外部芽鱗の凍結につづき, または少しおくれて枝条原基が凍った。カラマツ属の冬芽の示差熱分析では, 葉原基の凍結に由来すると思われる多数の小さい熱の放出が認められた。温帯性落葉広葉樹と異なり, 針葉樹の枝の木部では-30〜-40℃までの過冷却は認められなかった。