- 著者
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市河 三英
小見山 章
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.8, pp.337-343, 1988-08-01
御岳山の亜高山帯常緑針葉樹林で, 林内と形成後21年を経た林冠ギャップにおける稚樹の発生と死亡の過程を6年間追跡調査した。広葉樹は林内でも林冠ギャップでも毎年発生がみられた。シラベ(Abies veitchii LINDL), アオモリトドマツ(A.mariesii MASTERS), コメツガ(Tsuga diversifolia(MAXIM.)MASTERS), トウヒ(Picea jezoensis var.hondoensis(MAYR)REHDER)の各針葉樹の稚樹の発生年は同調していたが, 各々の種の発生数は大きな年次変動を示した。稚樹の死亡率は当年生から2年生にかけてが高かった。全齢個体群密度はこのため稚樹の発生年をピークに大きく変動した。稚樹の発生と死亡の過程は同じ種でも林内と林冠ギャップで異なっていた。林内のシラベ類とコメツガの個体群は個体の入れ替えを行いながら密度を平衡に保っていた。林冠ギャップのシラベ類とコメツガの個体群密度は6年間で増加の傾向を示した。今後, 林冠ギャップの林床の環境変化とともに, 各種稚樹の個体群密度や年齢構成も林内型へと変化していくものと考えられた。