著者
畑 憲治 可知 直毅 市河 三英
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.7-17, 2006-03-31

聟島列島媒島において、野生化したヤギ(ノヤギ)排除後に侵入した外来樹種ギンネムの出現パターンに対する、ギンネムの種子散布能力、ギンネムが侵入した環境における他種の出現パターンや環境要因との関係を明らかにした。島全体を含む地域的な空間スケールにおけるギンネムの出現は、ギンネムの種子散布様式の制限をうけ、侵入をうけた群落の構造や種組成には依存しなかった。一方で、個々のギンネム群落の拡大過程を反映する局所的な空間スケールにおけるギンネムの出現は、ギンネムの種子散布能力だけでなく、草本群落の構造や種組成によっても制限されていた。
著者
成田 憲二 Mertia R.S. Kumar Shuresh 市河 三英 古川 昭雄
出版者
JAPAN SOCIETY OF TROPICAL ECOLOGY
雑誌
Tropics (ISSN:0917415X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.105-114, 1997-10-30

インドのタール膿内の轍地(年降水量150mm)および半乾燥地(同450mm)の草本植生において,ヒツジの被食が草本群集の構成と被度に与える影響を被食圧の勾配に沿って調査した。両調査地1ヘクタール当たり8,6,3頭とコントロールの4段階の被食圧のプロットを設定し,ヒツジの導入後の季節変化を種構成,被度について調査した。草本植生の被度,構成種数共に半乾燥地の方が高く,季節変化も少なかった。乾燥地の植生は被度の季節変動が大きく,ヒツジによる被食の影響は乾燥地でより強く現れた。乾燥地では,雨期中期に優占する一年生広葉草本Indigofera属の3種がヒツジの被食に応じて被度が減少し,この3種の変動だけで被食による群集全体の被度影響の92.5%が説明された。半乾燥地にもこれらの種が生育していたが被度も低く,また,被食圧に沿った被度の減少は見られなかった。
著者
市河 三英 小見山 章
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.337-343, 1988-08-01

御岳山の亜高山帯常緑針葉樹林で, 林内と形成後21年を経た林冠ギャップにおける稚樹の発生と死亡の過程を6年間追跡調査した。広葉樹は林内でも林冠ギャップでも毎年発生がみられた。シラベ(Abies veitchii LINDL), アオモリトドマツ(A.mariesii MASTERS), コメツガ(Tsuga diversifolia(MAXIM.)MASTERS), トウヒ(Picea jezoensis var.hondoensis(MAYR)REHDER)の各針葉樹の稚樹の発生年は同調していたが, 各々の種の発生数は大きな年次変動を示した。稚樹の死亡率は当年生から2年生にかけてが高かった。全齢個体群密度はこのため稚樹の発生年をピークに大きく変動した。稚樹の発生と死亡の過程は同じ種でも林内と林冠ギャップで異なっていた。林内のシラベ類とコメツガの個体群は個体の入れ替えを行いながら密度を平衡に保っていた。林冠ギャップのシラベ類とコメツガの個体群密度は6年間で増加の傾向を示した。今後, 林冠ギャップの林床の環境変化とともに, 各種稚樹の個体群密度や年齢構成も林内型へと変化していくものと考えられた。