著者
佐藤 和文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.24, pp.57-64, 2001-03-09

「シニア世代」という、年齢で区分される社会的集団は、いわゆる「デジタルデバイド(デジタル格差)」の発生領域として位置付けられなければならない。デジタル技術やネットワーク技術の発達を背景に、日本の情報化はますます多様かつ急激な展開をみせ、その質的な変容も、著しい。特徴的なのは、日本の情報化が、急速に進む「高齢化」と同時進行している点である。デジタルデバイドの問題は、インターネット先進国である米国において、主に低所得層や障害者が抱える社会問題として論じられてきたが、「情報化」と「高齢化」が同時進行する日本社会においては、シニア世代IT(情報技術)のかかわりがとりわけ重要である。デジタルデバイドは高齢化対策の視点でも、適切かつ有効な対応が求められる。にもかかわらず、例えば政府が推進しようとしている「IT講習」は、1人の講師が20人に教える枠組みで、組み立てられている。シニア世代特有の身体的・社会的条件を考えれば、1人の講師が20人に教えるような一般的形態の講習は、効果がない。「IT講習」は「シニア世代はITと無縁であっていい」と宣言しているかのごときであり、シニア世代を「社会的に用済みの存在」としてきた日本の伝統的な高齢者観と通ずるものがある。「高齢化」と「情報化」が同時進行しているという意味で、日本の「デジタルデバイド」は、世界的にみても、固有の意味を持ち、その対応策は、日本固有の状況を十分見極めながら導きだされる必要がある。そのためにはコスト重視の企業的アプローチではなく、ボランタリーなエネルギーによって支えられる「NPO的な可能性」を生かす視点が重要である。

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