著者
藤井 直之
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山.第2集 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.95-107, 1984
被引用文献数
1

ペルー・チリ海溝に沿ってのプレートの沈み込む角度は, 約30度であるが, その上面が深さ100kmのところで水平になっている部分がある.現在の活火山のギャップは, まさに水平なスラブがあるところと一致している.そして, これら両者は2~3百万年前から出現したと考えられる.沈み込んだスラブが, 30度の傾きをもったまま, さらに深部まで続く領域と水平になっている領域との違いは, その上部のマントル・ウェッジ部の構造-特に温度構造-を決定的に違わせている.一般に島弧の火山活動は, (1)沈み込むスラブがもたらす含水鉱物からの脱水反応によるH<sub>2</sub>Oの供給と, (2) H<sub>2</sub>Oが供給されれば溶融相が形成される状態(Potential melting状態)が必要条件と考えられる.したがって, 深さ100kmで水平に"沈み込む"スラブは, (2)の条件を満たさない温度構造を形成していると考えられる.ナスカ海嶺とペルー・チリ海溝との会合点以北に分布する活火山のギャップの領域では, 下部地殻も上部マントルも部分溶融の状態にないらしい.地殻熱流量のデータは不十分ではあるが, これと矛盾していない.一方, 南部ペルー(及び北部チリ)においては, 重力異常などから推定される地殻の厚さが60km以上の部分(アルティプラーノ)に活火山が存在する.そこでは30度の角度で沈み込むスラブ, 厚い地殻, 地殻熱流量が90mW/m<sup>2</sup>以上であることなどから, 深さ50km以深のガブロ質の組成をもった地殻は, 少くとも部分溶融の状態にあると結論できる.このようにして推定された温度構造から考えると, 中部アンデスにおける現在の火山活動は, 下部地殻の部分溶融状態と密接な関係にあるといえよう.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? アンデスの火山活動からみたペルー南部における地殻・マントルの温度構造(藤井 直之),1984 https://t.co/eSrenzXodg ペルー・チリ海溝に沿ってのプレートの沈み込む角度は, 約30度であるが, その上面…

収集済み URL リスト