著者
塩野 清治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.18, pp.155-174, 1980-03-30

西南日本の地殻内地震及び地殻下地震のテクトニックな意味を,特に中央構造線(MTL)沿いの断層運動との関係において議論した。MTL沿いの断層運動の活発な部分(紀伊半島西部〜四国中部)では,地殻内における,小又は微小地震の活動が活発であり,MTLは,広い意味で,南側の地震活動域と北側の低活動域の間の境界となっている。これらの小地震によって解放される歪は,小規模なものであるため,MTLの断層運動が活発な部分のまわりに,過去1,000年の間に大地震が発生していない事実は,近い将来における大地震の発生を示す「地震の空白域」として,認識されるべきであろう。地殻下地震の分布や地震波高速度層の分布から,high-Q zoneの分布を参考しつつ,南海トラフからもぐりこんでいるフィリピン海プレートの形を推定した。その形は,MTLの断層運動と密接な関係があり,(1)断層運動の活発な所では,もぐりこむプレートのの先端は,MTLの外側にある,(2)断層運動が不活発な所では,プレートの先端は,MTLの下を横切って内側までのびているという見かけ上の位置関係がみられる。この関係は,MTLより外側の大陸プレートがMTL沿いに,内側のプレートからdecoupleするか,又は,decoupleしないかという関係におきかえて説明することができた。

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