著者
塩野 清治
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-46, 2008 (Released:2010-03-23)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

本講座では,直線ののびる方向や面の傾きなど地質構造の姿勢を表すデータ(方向情報)の数値処理法を考える.野外調査データから地下構造を推定するプロセスを,方向情報をベクトルで表現することによって,ベクトルの和や差,内積,外積などを活用した空間幾何学の問題として考察する.はじめに,地層面の法線ベクトルを使った平面の方程式にもとづいて,一定方向に傾斜する地層群の空間分布に関わる諸性質を体系的に整理する.そのあと,面のずれ(隔離)に焦点をあてながら,断層を含む地質構造を考察する.最後に,観測された複数の方向情報からその平均の方向を求める問題をステレオ投影法とともに考察する.本講座は,ベクトル表現にもとづく方向情報の活用法を紹介することが主な目的である.理解を深めるために,露頭観察の結果から3次元地質構造モデルを構築する作業に関連するいくつかの演習問題を示した.
著者
塩野 清治
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.31-39, 2012-06-15 (Released:2012-10-16)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

3 次元空間内における地層の分布域は,いくつかの境界面で上下を境された部分空間として認識される.地層と境界面の関係は地質構造の論理モデルとよばれる.地層の分布域は各境界面によって 2 分割された領域の共通集合あるいは共通集合の和集合の形式で表現される.この表現形式をブール代数という一般的な視点から再考することによって,地質構造の論理モデルへの理解が深まるだけでなく,さらには新しいアルゴリズムの発見へと発展する可能性がある.本講座では地層の分布域を表現する多項式にかかわる分野に話題を限定して,ブール代数の基礎概念を演算法則,順序構造,原子元,ブール同型,ブール関数,ブール式,minterm 標準形の順に解説する.最後にその応用例として,地層の分布域をブール式の minterm 標準形として一般表現する手続きを示す.
著者
塩野 清治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.18, pp.155-174, 1980-03-30

西南日本の地殻内地震及び地殻下地震のテクトニックな意味を,特に中央構造線(MTL)沿いの断層運動との関係において議論した。MTL沿いの断層運動の活発な部分(紀伊半島西部〜四国中部)では,地殻内における,小又は微小地震の活動が活発であり,MTLは,広い意味で,南側の地震活動域と北側の低活動域の間の境界となっている。これらの小地震によって解放される歪は,小規模なものであるため,MTLの断層運動が活発な部分のまわりに,過去1,000年の間に大地震が発生していない事実は,近い将来における大地震の発生を示す「地震の空白域」として,認識されるべきであろう。地殻下地震の分布や地震波高速度層の分布から,high-Q zoneの分布を参考しつつ,南海トラフからもぐりこんでいるフィリピン海プレートの形を推定した。その形は,MTLの断層運動と密接な関係があり,(1)断層運動の活発な所では,もぐりこむプレートのの先端は,MTLの外側にある,(2)断層運動が不活発な所では,プレートの先端は,MTLの下を横切って内側までのびているという見かけ上の位置関係がみられる。この関係は,MTLより外側の大陸プレートがMTL沿いに,内側のプレートからdecoupleするか,又は,decoupleしないかという関係におきかえて説明することができた。
著者
大前 久美子 塩野 清治 弘原海 清 升本 眞二
出版者
Japan Society of Geoinformatics
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.10, pp.145-168, 1985-08-31 (Released:2010-02-26)
参考文献数
5
被引用文献数
1

In this paper, we presented the principle and the BASIC program for the numerical estimation of the dip-strike of a bed at any point from dip-strike data obtained at irregularly spaced outcrops (observation points) . In order to represent numerically the attitude of the bed, we defined a new term of “a normal vector of abed” (an unit vector which is normal to the bedding plane and is oriented in the direction of the geologically upper side of the bed) . The dip-strike is calculated here from the weighted average of the normal vectors of beds at observation points. The presented program estimates dip-strikes at grid points and displayed them on the screen of a personal computer as the strike-line map.
著者
塩野 清治
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.195-218, 2007 (Released:2010-03-23)
参考文献数
11
被引用文献数
4 4

地質学分野の情報処理に必要とされる数値計算法のうち最も基礎的な部分を解説する.地質学の基本概念である走向・傾斜を中心テーマとして,平面の方程式や微分・偏微分に関連する各種の数値計算法について,演習問題を解きながら理解が深められる.演習問題は表計算ソフトによる計算を前提にしたものであり,表計算ソフトの自習書としても利用できる.最終目標は,格子データ(DEM)で離散近似された曲面の格子点での傾きが計算できること,および地質図に描かれた地層の境界面の傾きが計算できることの2点である.
著者
塩野 清治
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.195-218, 2007
被引用文献数
4

地質学分野の情報処理に必要とされる数値計算法のうち最も基礎的な部分を解説する.地質学の基本概念である走向・傾斜を中心テーマとして,平面の方程式や微分・偏微分に関連する各種の数値計算法について,演習問題を解きながら理解が深められる.演習問題は表計算ソフトによる計算を前提にしたものであり,表計算ソフトの自習書としても利用できる.最終目標は,格子データ(DEM)で離散近似された曲面の格子点での傾きが計算できること,および地質図に描かれた地層の境界面の傾きが計算できることの2点である.<br>
著者
三田村 宗樹 中川 康一 升本 眞二 塩野 清治 吉川 周作 古山 勝彦 佐野 正人 橋本 定樹 領木 邦浩 北田 奈緒子 井上 直人 内山 高 小西 省吾 宮川 ちひろ 中村 正和 野口 和晃 Shrestha Suresh 谷 保孝 山口 貴行 山本 裕雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.179-188, 1996-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
19
被引用文献数
1

1995年兵庫県南部地震は,阪神地域に甚大な被害を生じさせた.阪神地域は都市化の進んだ場所で,人工的な地形改変が多くの場所で行われている.しかし,現在の地形図上では,その箇所が不明確であるため,過去の地形図との比較から人工改変地形の抽出を行ったうえで被害分布との関連を西宮・大阪地域について検討した.大阪地域では,基盤断層の落下側に被害が集中する傾向があり,基盤構造との関連性が存在することを指摘した.これについては,既存地下地質資料をもとにした地震波線トレースのシミュレーションの結果から,地震波のフォーカシング現象がかかわっているとみている.結論として,日本の大都市の立地する地盤環境は類似し,地震災害に関して堆積盆地内の厚い第四紀層での地震動増幅,伏在断層付近でのフォーカシング,盆地内の表面波の重複反射よる長時間震動継続,表層の人工地盤や緩い未固結層の液状化など共通した特性を有していることを指摘した.
著者
塩野 清治
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.213-223, 1999-12-25
被引用文献数
7

3次元の領域Ω内に存在する堆積物を適当な層序単元に区分することは,数学的にみればΩの直和分割を定めることに対応する.このとき,各層序単元の分布城はそれぞれ直和分割のひとつのブロックに対応する.OとAを2種類の層序区分に対応するΩの直和分割とする.OとAの間にOはAの細分であるという関係が存在するとき,Oが本来もっていた地層としての諸特性がAにおいても保存されるはずである.どのような特性が保存されなければならないのか,またそのためにはどのような条件が必要であるのか?この問題に答えるため,本論文では地層の最も基本的な特性である「地層累重の法則」を考察する.この法則を"ある地層xが別の地層yの下位にあることをひとつの露顕で観察したとき,xはyより形成時期が古いといえる"という推論規則として定式化し,この法則がOからAに保存されるための必要十分条件は"すべてのOのブロックx,yに対して,xがyより下位にあるならばf(x)はf(y)より形成時期が古いといえることである"ことを証明する.ここで,f(x)とf(y)はそれぞれxとyを含むAのブロックを表す.最終的にこの条件の下でOからA_1を,A_1からA_2を,_<…>,A_<m-1>からA_mを順次生成していったとき,すべての層序区分O,A_1,A_2,_<…>,A_mにおいて「地層累重の法則」が成り立つと結論した.以上の結果は地質学の数学的基礎を形式体系の形で確立するための重要な鍵を与える.
著者
塩野 清治 升本 眞二 八尾 昭
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は,地下構造を探求する地質学的原理の定式化を通じて,地質調査データにもとづいて3次元地質構造を推定する計算機処理システムを具体化することである。地質学の原理に関する理論面での研究では,地層の分布域,地層・化石・地質年代の関係,地層の対比・区分など地質学の基礎概念が集合,関数,関係,同値関係,順序関係,ブール代数など離散数学の初歩的概念で表現できることを示した。また,地質学の基本原理である「地層累重の法則」に対して数学表現を与え,この法則が地層の形成順序や層序区分の基礎であることの理論的根拠を明らかにした。これは地層学的対象の計算機処理の原理を提示するとともに,「地質学の数学的基礎」という従来にない新しい研究分野への展望を与える重要な成果である。また,堆積作用と侵食作用で形成される地質構造に対する数学モデルにもとづいて,地層の分布域と体積面や侵食面に相当する曲面との間に成り立つ論理的関係(論理モデル)を一般表現する方法を導いた。論理モデルとの曲面の具体的形状が与えて地層の分布域が確定するという立場から,地質調査データから地質図を作成する過程を一連の数学的手続きとして形式表現した。これは地質図の計算機処理に対する理論的基礎を与えるものである。計算機処理の面では、露頭での観察データを入力して3次元地質構造を出力するアルゴリズムを研究した。処理システムは空間情報の入力・管理・解析・モデリングの標準基盤として多くの分野で実用されているGIS上で開発した。処理システムの有効性は既存の平面地質図を入力データとして、3次元地質構造を推定することによって検証した。2次元の空間情報を対象としたGIS上で3次元の地質構造を処理できる道を開いたことは3次元GISの発展や地質情報の活用を促進する上で重要な意義を持つ。