著者
野口 玉雄
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.928-929, 2002-11-15

フグ毒の研究は,1960年代の前半まではフグ毒(tetrodotoxin,TTX)構造の解明に終始した。1964年には,有機化学者の英知を集めた国際天然物会議において3つのグループからTTXに対して同一の絶対構造が提案され,この問題は一段落した。その際にMosher教授によるカリフォルニアイモリからTTXが検出された発表があり,TTXがフグの占有物である神話が崩れた。その後,日本で起きた魚介類自然毒による中毒に際して,いくつかの中毒原因物質がTTXと同定され,TTXの生物界における分布が広かった。これに伴って,これまで神秘と思われていたフグの毒化機構に食物連鎖が浮上するとともに,TTXの生体内における存在形態も論議されるようになった。さらに,抗TTXモノクローナル抗体の開発により,これに関する活発な研究が行われている。これら,最近の発展の著しいTTX研究のハイライトを紹介するとともに,これまでの研究を統括して,将来的なTTX研究の展望を述べたい。

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