- 著者
-
加藤 弘通
- 出版者
- 一般社団法人日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.2, pp.135-147, 2001-07-15
本研究の目的は,問題行動及び指導に対する生徒の意味づけを明らかにすることにより生徒同士の関係のあり方から問題行動の継続過程について検討することである。問題行動の繰り返しによって高校を中途退学した少年F(18歳)を対象に17回のインタビューを行い,彼の問題行動や指導,自己に対する意味づけを探った。また,Fと同時期に同校に在籍していた生徒4名へのインタビューから,他の生徒の問題行動や指導,及び問題行動を起こす生徒(F)への意味づけを探った。そして,Fと他の生徒の意味づけを比較し,問題行動を巡る生徒同士の関係のあり方から問題行動の継続過程について検討した。その結果,(1)問題行動・指導に対する意味づけは,生徒が置かれた状況によって異なること,それと対応して,(2)問題行動を起こす生徒も個々の生徒との関係に応じて,自らの問題行動に対して異なる意味づけをしていることが明らかになった。Fは「悪ガキ」との関係において,問題行動を肯定的に意味づけ(「格好いい」),親密な関係を築く一方で,悪ガキ以外の生徒との関係においては,問題行動を否定的に意味づけ(「(自分は)抹消されている」),関係を希簿化させていた。このことから,Fが問題行動を起こすほど,そして,それに対する指導を受けるほど問題行動が繰り返されやすくなる生徒同士の関係が生じるという。Fの問題行動・指導を巡る循環関係の存在が示唆された。